私たちの原風景2
空と在る
プリントデザインを担当しているエンドウが
幼い頃に育った岡山の実家には、母屋と離れがあった。
縁側から空を見上げると、2つの家の屋根と屋根がまるで額縁のようになり
青空が一枚の絵に切り取られるように見えた。
「おぉ～‥空ってすごいなー！雲ってすごいなー！」
小さな小さな女の子が、大きな大きな空に心を掴まれた瞬間だ。
夜には父と縁側に座り、星空を見上げたことも思い出す。
いつまでも心の中にある幸せな出来事。
ぎゅっと胸が締め付けられるような懐かしい時間。
誰にとっても、「空」は一番身近で大切な
原風景なのかもしれない。
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エンドウは、空に漂う「流れ雲」を表現したいと考えた。
こんな時代だからこそ、空をおおらかにまとえるような衣服を。
その想いに「任せてくれ！」といつも応えてくれるのが、
インドの頼もしい職人たちだ。
まさに空のように大きく広げた生地のうえに、
スクリーンプリントでしゅっしゅっと模様が足されていく。
ここで一つハプニング勃発。
お願いしていたデザインとは異なる配色で、届いた生地があったのだ。
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「グレイとピンク」という予定になかった色合わせ。
でもよく見るとなかなか良い色。
…いや、結構好きかもしれない。
はからずしも、夕暮れ時の空の色が生地になっていた。
インドの人たちが選んだ配色だと思うと、なんだか愛着も湧いてくる。
そんな予定外のカラーも加わり、出来上がった流れ雲シリーズ。
悠々と、のびのびと。
一枚の服が、大空のように誰かの毎日を包んでくれますように。
昔も、今も、これからも、私たちは空とともに在る生き物だ。
それぞれの原風景
今回の衣服デザインをはじめる前に、デザイナーのミズカミは、
パートナーであるカラティマクの人々にとっての「原風景」を考えてみることにした。
インド・ラクノーの地には、ここのが一番美味しい！と胸を張って自慢できる果実がある。
現地の人々の暮らしにとても身近な存在、マンゴーだ。
ラクノーの中心部から刺繍村へ続く道には、マンゴーの木が並ぶ。
たわわに実った大きなマンゴーを包むように、ふわふわと風にゆれる蔓や葉。
伝統的な手刺繍のなかに、マンゴーのモチーフが多く使われていることからも、
どれほど彼らの暮らしに根付き、愛されてきた存在なのかがよくわかる。
今回のコレクションでは、マンゴーの木や花、実や蔓を
たっぷりの手刺繍で描いてもらった。
そして、土台となる衣服のデザインには、ミズカミ自身の原風景も込められている。
彼女が育った滋賀県。
田んぼ、小川、遠くの山々、そして母なる琵琶湖が、悠然とそこにある。
その風景を高いところから見下ろすと、いつも気持ちの良い風が吹き抜けていく。
そんな大切な思い出とリンクしたのが、ヨーロッパの原風景。
遥か遠くの地で暮らす、羊飼いの少年の姿だ。
風のとおる丘の上で暮らす少年。
雄大な景色のなかで生きる彼の姿に、不思議と懐かしさと親しみを感じる。
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そんな羊飼いの人々の仕事服をモチーフとして、デザインに落とし込むことにした。
余計なものをそぎ落とした、シンプルで、素朴な一枚のブラウス。
そこにマンゴー刺繍をたっぷりと施した。
ふんわりやわらかなシルエットに、心が躍る。
袖を通した瞬間、清々しく、どこか懐かしい気持ちになるのは、
私の中にもきっと同じ風が吹いているからだろう。
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タニ
