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今月のSISAM COFFEEだより

一杯の美味しさの向こう側。

海を越えて、山を越えて、いざフィリピンの山岳地方へ。
現地の「今」と私たちの「今」をつなげる、SISAM COFFEEだよりです。

たくさんの作り手とともに美味しいコーヒー豆を届けてくれている
環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」の反町さんより
今月のお便りが届きました。

7月 パーチメントを剝く機械・ハラ―を届けてきました!

皆様にご協力いただいたSPINクラウドファンディング「世界のみんながしあわせになるコーヒー」(https://spin-project.org/projects/73)で、ハラー(あるいはデハラー)と呼ばれる機械を購入してカパンガン町の「ダイヨコン農家組合」に届けてきました。

「ハラーって何?」と思う人もいると思いますが、お米で言う”もみすり機”です。

(コーヒー豆の構造 https://www.cuisinart.jp/sp/fcc_slurp/column/210617_05.html

コーヒーの実が赤い「チェリー」と呼ばれるかわいらしいフルーツであることはご存じの方も多いと思います。コーヒー豆というのは、このフルーツの種ということになりますね。
他の多くのフルーツの場合、私たちはフルーツの皮と種の間にあるジューシーな果肉の部分をおいしくいただくわけですが、コーヒーの場合、目指すは一番中にある「種=豆」。

収穫した赤いチェリーから種=豆を取り出す作業を「精選」とか「加工」などと呼んでいます。その方法にもいろいろとあって、そのやり方がコーヒーの味に大きな影響を与えます。
(精選方法についてのお話はまたの機会に譲ります)。

その精選過程の最後のステップであるパーチメントと呼ばれる殻を剥く機械がハラーというわけです。

(パーチメントコーヒー)

コーディリエラ山岳地方のほとんどの農家や農業組合はハラ―を持っていません。

昔ながらの木や石製の臼に乾燥したパーチメントコーヒーを入れ、中の豆をつぶさないように気をつけながら杵で搗(つ)いてパーチメントを割ります。
そして、臼の中身をざるに移してパーチメントを吹き飛ばすという作業をしているのです。

1回に搗ける豆の量が1キロとして、50キロの生豆を作るのにこの作業を50回もすることになるのです。この気の遠くなるような重労働がつらすぎて、コーヒー生産をあきらめる人もいるくらいです。

このクラウドファンディングでは、生産量が上がってきている二つのコーヒー生産地にハラ―を購入し、農家の臼と杵による重労働の負担を減らしてあげようというのが目標の一つです。

しかし、ここコーディリエラ地方にはハラ―を販売している会社がありません。

そこで、遠くミンダナオ島ダバオ市にある農業機械製造&販売会社に発注をすることにしました。
ミンダナオ島ではコーヒー栽培がブームになっているらしく、この農業機械会社はハラ―の注文が殺到していて製造までなんと4か月待ち!

ようやく、その350キロもするその機械が海を渡ってやってきました。
バギオから約2時間半、山間部の道路を通ってサグボ村の組合事務所に到着。
何とか人力でトラックから下して、サンプルのパーチメント豆で試運転をしましたが、なんということでしょう。
サンプル豆は無残にもすべて割れてしまいました。スタッフ一同うなだれて帰路につきました。

インターネットのあるバギオ市に戻り、機械製造会社に問い合わせをして、日を改めてサグボ村を再訪。機械の微調整をして再度テスト運転したところ、あれよあれよという間に100キロのパーチメントを剥く作業が終了しました。

(喜びを隠しきれないブリジータさん)

試運転に立ち会ってくれた組合メンバーのブリジータさんはこう言います。
「昨年は250kgのパーチメントを剥く作業を大きな臼と杵を使って5人で行い、5日かかったのです。しかも、13kgの豆が割れてしまい、無駄になりました。こんなにあっという間に100キロの豆の作業が終わるなんて信じられません!」
と喜びを隠しきれません。

今年は凶作でこの機械が活躍する場が限られていましたが、来年以降の精選作業に大活躍してくれること間違いなしです。

ご協力いただいた皆様、どうもありがとうございました。
 

////////////////

執筆:  反町眞理子
Mariko Sorimachi

1996年よりフィリピン在住。
2001年環境NGO「Cordillera Green Network(CGN)」をバギオ市にて設立。
コーディリエラ山岳地方の先住民族の暮らしを守り、山岳地方の自然資源を保全するために、
環境教育、植林、生計向上プログラムなど、数多くのプロジェクトを行っている。
2017年、CGNのスタッフたちとともに、社会的企業Kapi Tako Social Enterpriseを創立。

6月 気候正義ってなに?

毎年5月の第2土曜日は世界フェアトレード・デー。今年のテーマは「Climate Justice」でした。
日本語にすると「気候正義」となって、ちょっと固い感じで、よくわからなくありませんか?

(WFTO=世界フェアトレード連盟のHP https://wfto.com/fairtradeday2022/より)

いま、世界中の人たちが「1日も早く何とかしないと地球が危ない!」と言っている気候変動による地球温暖化は、先進国の人たちが環境破壊などお構いなしに人間にとっての便利さや豊かさのみを追及して開発を行ってきたのが原因です。
それなのに、異常気象や自然災害の影響を最も強く受けているのは、とくに農業や漁業などに携わっている人たちです。
そして、災害対策などに予算を割く余裕がなくガバナンスも弱い、いわゆる発展途上の国々には、気候変動によってますます貧困が進んでしまっている人たちも多くいます。

現在、まだ世界の5人に1人(13億人)が電気のない生活をしているそうですが、温室効果ガス排出トップ10の国の排出量は世界の7割に達するそう。

不公平だと思いませんか?

先進国に暮らす人たちが気候変動を食い止めるための行動を起こして、気候変動によって悪影響を受けている途上国の人との間の「不公平さ」を正しましょうというのが、「Climate Justice=気候正義」というわけですね。
途上国で環境に配慮して生産された商品を適切な値段で継続的に購入し続ける「フェアトレード」は、その「不公平さの是正」に貢献できるのです。

わたしもフェアトレード月間にその普及にお役に立てたらと、石川県野々市市にあるオーガニック&フェアトレードショップ「NOPPOKUN」(https://noppokun.co.jp) が企画してくれたオンライン・トークイベント「コーヒーがとってもおいしくなる話 ~「命の源」森をつくるフェアトレードコーヒー」に参加させてもらいました。

ここフィリピンのコーディリエラ山岳地方の人たちも、気候変動の原因とされる化石燃料によるエネルギーをあまり使わないで生活してきた人たちです。
しかし、気候変動の影響と思われる大雨や巨大台風の発生で土砂崩れなどの大規模な自然災害が頻繁に起こっています。
また、15年間農家とともに試行錯誤をしながら頑張ってきたコーヒー栽培も、昨収穫期は考えられないような不作となりました。農家の人のなかには、せっかく安定した収入に結びついてきていたコーヒー栽培をあきらめる人も出てきています。

(トークイベントの発表スライドより)

今回のトークには、シサムコーヒーを販売してくださっている日本全国のフェアトレードショップのみなさんも参加してくれました。オンラインでのイベントのいいところです。

直接ショップの人やシサムコーヒーを飲んでくださっている方々に、「コーディリエラ地方で起きている気候変動の影響」「昔ながらの先住民の暮らしとその豊かさ」「私たちがなぜアグロフォレストリーをすすめているか」などを、写真の紹介とともにお話しすることができてとてもうれしかったです。
オンラインとはいえ、参加してくださった人たちがとても熱心に耳を傾けてくれていたのが伝わってきました。

先進国が率先して行うべき「Climate Justice」ですが、気候変動の解決は先進国の人の努力だけではむずかしいのも確かです。
途上国の人たちの協力がなければ実現しません。

お互いに情報交換をし、関心と理解を高めて、ともに地球環境の改善のための手を取り合っていくことが大切だと実感しています。

5月 山岳民族の郷土料理を紹介するイベントに参加

シサムコーヒーはフィリピンのルソン島北部のコーディリエラと呼ばれる山岳地方で栽培されています。
私たちのパートナーであるコーヒー農家はベンゲット州に多く、その人数は全部で300名くらいに上ります。

コーディリエラ山岳地方に住んでいる多くは先住民と呼ばれる人たち。
まとめて「イゴロット」と呼ばれることもありますが、イバロイ、カンカナイなど、話す言葉の違いによって、様々な民族に分類されています。

多様なのは言葉だけではありません。民族衣装の手織り布に織り込まれる模様も民族ごとに違います。そして、もちろん食文化も違います。

そんなコーディリエラ山岳地方の様々な民族の食文化を紹介するイベント「マンガン・タク(Let’s Eatという意味のイロカノ語)」が、バギオ市のライト公園で始まりました。
私たちのNGOとコーヒーショップも招待され、おいしい山岳地方産のコーヒーと伝統スイーツのブースを出店中です。

このイベントが最初に行われたのは2019年。
遠くイタリアのスローフード協会が、フィリピン観光省と共同で開催しました。

それまで、多くの先住民は、自分たちが普段食べている、いわゆる「郷土料理」が、街に暮らす人や海外の人の関心を集めるなんて思いもよりませんでした。
世界中のあらゆる都市で目にすることのできる ”ファスト” フードショップのハンバーガーが、先住民の人のあこがれの食べ物だったのです。

ところが「マンガン・タク」イベントでは、森から採れる山菜、川から獲れた魚、雄大な棚田で先祖代々受け継がれ大事に育てられてきた古代米(赤米、紫米)などを使った料理やお菓子が主役になりました。
そして、それら “スロー” フードが都市部や海外からの観光客を惹きつける素晴らしい文化であることを知らしめたのです。

(参加者みんなに分けられたワットワット)

今回の「マンガン・タク」イベントのテーマは「ワットワットWat Wat」。
「ワットワット」とは、先住民の村で儀礼や祭りの際に供儀された豚のスライス肉のことを言います。
シャーマンが祈りとともにつぶした豚は大鍋でシンプルに塩とともに煮込まれ、その肉は小さくスライスされて、コミュニティのすべての人に分けられるのが先住民の伝統です。

「マンガン・タク」イベントにはアパヤオ州やカリンガ州などかなり遠くからも様々な民族が参加し、オープニング式典ではワットワットを参加者のすべての人たちがともに食しました。

(もち米やキャッサバ芋、ココナツ、バナナなどを使った伝統スイーツ。バナナの葉っぱで包まれてゼロウエストなお菓子です)

私たちのブースでは、ベンゲット州各地のコーヒーとともに、コーヒーにぴったりの伝統の手作りスイーツを提供しています。
イベントは、先住民の人たちが自分たちが守ってきた食文化、そしてコーヒーの味を誇りに思える素晴らしい機会となっています。

4月 2年ぶりにコーヒー好きのインターンがやってきました!

2月からあれよあれよという間に、フィリピン全土で新型コロナウィルスの感染者が減り、あっという間にマスク以外は通常に戻っているフィリピンです。

「待ってました!」とばかりに、私たちのNGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」にも、日本人インターンがやってきました。

金沢大学在学中の古瀬貴一君(こちらでの呼び名は”キイチ”)は、単位をさっさと取得し、コロナ禍をものともせずに休学してカナダのカルガリ―に短期留学。
今年1月からはCGNでのインターンを希望していましたが、フィリピンでは新型コロナの感染がピークで、観光(短期滞在)ビザでの入国ができませんでした。

それでもキイチ君はあきらめません。
カルガリーの「フェアトレード・カルガリ—」という団体でボランティアを経験してフェアトレードに関する知識も身につけ、
フィリピンが外国人の観光ビザでの入国を受け入れ始めたというニュースを聞いて、さっそく飛んできてくれました。

なんで世界に数あるNGOの中で、そうまでして私たちのNGOかって?
そう、キイチ君の夢は、「エシカルなコーヒーを世界に広め、小さな農家の暮らしを守る」ことなのです。
だったらCGN以上のNGOはないかもしれませんね(自画自賛(笑))。

もともとキイチ君は、大学に通いながらスターバックスで3年半もバイトを続け、社内のコーヒー知識に関する資格テストにも合格している筋金入りのコーヒー好き。
コーヒーの生産地の実情を自分の目で見て、農家の暮らしを知り、コーヒーを通して世界の課題を解決するために自分にできることを探し考えていきたいというのが、キイチ君のCGNインターンとしてのビジョンです。

(市内の人気カフェHatchでのコーヒーワークショップに飛び入り参加)

ところで、ここバギオ市では感染者が減ったことから、最大のお祭り「パナグベンガ(フラワー・フェスティバル)」が3年ぶりに開催されることになり、観光客の人数制限も撤廃されました。そして昨年から始まった「モンタニョーサ映画祭」も同時に開催決定。
2年間この日を待ちに待っていたバギオの観光業! 町は多くの人であふれ、一気に活気づいています。

オンラインでの販売に力を入れて何とかしのいできた私たちのコーヒーのフィリピン国内販売事業も、この辺で勢いをつけたいところです。
やはり「コーヒー」と「カルチャー」は切っても切れない関係ということで、町の中心の公園内に設置された映画祭の屋外上映会場で、小さなコーヒーブースを設けることにしました。

そう、バリスタ経験も豊富なキイチ君にぴったりの活躍の場が待っていたっていうわけです。
バギオ到着の翌日には、私たちのパートナーであるコーヒースタンド「NEST」スタッフによるコーディリエラ・コーヒーの淹れ方指導が始まり、
その次の日にはフィリピンのバリスタ・チャンピオンによるテイスティング・ワークショップに参加する機会に恵まれ、さらにその翌日にはさっそくコーヒーブースにてバリスタ・デビューを果たしました!

(モンタニョーサ映画祭の屋外上映会場に設置したブース。左がキイチ君)

映画好きは、コーヒー好き。
じっくりゆっくりマニュアルのドリップとエアロプレスで淹れるコーヒーは、3年ぶりのお祭りに熱狂する人々にちいさな憩いの時間を提供しました。

CGNとKapi Tako Social Enterpriseのメンバーも、2年ぶりに万難を排してやってきてくれた日本人インターンの来比に元気づけられています。
すーっと新しい風が吹き込んだみたいで、スタッフみんなのやる気アップにつながっています。

これから、シサム工房へお送りするコーヒーの集荷が本格化します。
残念ながら収穫期は終わっていますが、キイチ君は農家からのコーヒー豆の集荷から輸出までの行程、そして手作り感あふれる私たちの国内販売やオンライン販売のプロセスを経験してくれます。
何を学んで、どんな新しいアイデアを彼なりの視点で提案してくれるか楽しみですね。

(フィリピンコーヒー抽出トレーニング中)

キイチ君のインターン体験記はCGNのインターン・ブログで読めますので、ぜひ!
https://cordilleraintern.tumblr.com/

3月 世界フェアトレード連盟(WFTO)の監査がありました

乾燥施設の抜き打ち調査。「洗濯物は別にしてねぇ」と指導を受けました~~。

シサムファンの方々は、昨年にシサム工房が晴れてWFTOの正式メンバーになったことはご存じかと思います。
(その長い道のりについてはこちらの記事でhttps://sisam.jp/information/293176/

フェアトレードはそのまま訳すと「公正な貿易」となります。
「フェア=公正」と言葉にするのは簡単ですが、何をもって「フェアか」の判断するかはなかなか難しいと思います。
自分が「フェア」と思っていても、もしかしたら取引相手の人はそう思っていないかもしれません。
そこで、フェアであるかを判断する「評価基準」が必要になり、「認証」というシステムがあるわけです。

こちらは国際フェアトレードラベル機構の認証ラベル

フェアトレードの国際基準は大きく2つあります。
国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定める「国際フェアトレード基準」と、
フェアトレード団体のネットワーク「世界フェアトレード連盟」(World Fair Trade Organization)=WFTO」が掲げる「10のフェアトレード指針」です。

前者は製品に関する認証で、後者は組織に関する認証といった方がわかりやすいかもしれません。

シサム工房はWFTOの10の基準に関する審査を受けてパスし、正式に認証されたメンバーとなりました。
そして、シサム工房の取引先である私たちも、その基準を満たしているかどうかのチェックを受けたというわけです。

国によって物価も違うし、文化も違うし、生活習慣も違う。。。

そういった世界中のすべての国々に共通する「フェア」の評価基準を設けるのは一筋縄では行きません。

基準を定める認証団体の人たちの苦労は大変なことだと思います。

トゥブライ町アンバサダー村でのインタビューの様子

今回のコーヒー生産地でのWFTOの審査は、まず生産者の人たちが十分に栄養を得て日常生活を送るのに必要な費用についてのアンケート調査から始まりました。

そのためには、生産者の人たちの食生活を知る必要があり、フツーの(またこのフツーの判断が難しい…)農家の人が何を食べているかを調査します。
「週に何回、何グラムくらいお肉を食べますか?」みたいな質問から始まるわけです。
これが、フェアな支払いであるかを判断するかの「初めの一歩」というわけです。

認証に至るまでのプロセスは、こんな気の遠くなるようなステップを踏んでいるというわけですね。

トゥブライ町バアヤン村でのインタビュー

さて、そういったプロセスを経て、今回ようやく最終ステップである監査人の生産農家へのインタビューに至りました!
コロナのせいで延期に延期を重ねて1年以上遅れ、ようやくマニラから監査人がコーヒー生産者のコミュニティに入れたというわけです。

シサム工房と生産者の間にいる私たち「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」のスタッフはインタビューに公正さを保つため立ち会わせてもらえず、いったいどんなやり取りが行われたかはわかりませんが、インタビュー会場からは笑い声が聞こえてきましたから、審査はなごやかに行われたと思います。

WFTOオランダ本部の審査を経て結果は数か月以内にはわかるはずです。
みなさん、お楽しみに!

2月 エルシーさん、がんばる

(エルシーさんが自力で作った乾燥用ビニールハウス。菊の苗場も兼用。)

「今年の収穫はどんな様子だろうか?」
「農家さんはパンデミック下で元気にしているだろうか?」という様子伺いと、
「今年もコーヒー豆を購入させていただきますから安心してくださいねえ」というご報告に、
トゥブライ郡のエルシーさんを、実に3年ぶりに訪問しました(スタッフは何度か訪問しています)。

コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)はトゥブライ郡のこの地域で
2016年から2019年の3年間、神奈川県のNPO法人WE21ジャパンとJICA横浜の協力で、コーヒーの品質向上とコーヒー農家の組織強化のプロジェクトを行いました。
そのときに私たちはエルシーさんの存在を知りました。

エルシーさんは、このエリアではもっともたくさんのコーヒーの木を持っている農家の一人です。
エルシーさんの土地に生えているコーヒーノキは亡くなったご主人の提案で植えたものだそうです。
子供たちはすでに巣立っていて一人暮らしのエルシーさんは、ご主人が遺したコーヒーノキに手を焼いていました。

「収穫期に一度に実をつけるすべてのコーヒーチェリーの収穫を一人で行うのは無理なんです。その収穫したチェリーを加工するのも一人じゃ無理。
近隣の若者に頼んでコーヒーを収穫してもらいますが、日当を払うお金がないので収穫したコーヒー豆で支払っていますが、手元に残るコーヒーの実は少しだし、市場では買いたたかれてコーヒーから得られる収入はわずかなんです。」

当時CGNのプロジェクトで開催したセミナーに参加したエルシーさんは、品質のいいコーヒー豆を作れたらちゃんと収入になると知って、俄然やる気を出しました。
しかし、いかんせん軍資金がありません。
つまり、収穫や加工をしてもらうアルバイトに支払うお金がないのです。

(2018年暮れ、リリーさんの鶴の一声「私たちが手伝います!」で、わけのわからないまま、毎日、収穫に駆り出される。左端は遊びに来たコーヒー好きの版画家の田中彰さん。)

そこで、CGNのコーヒー生産地担当のリリーさんが立ち上がります。
「私たちが手伝います!」
「エルシーさんの自然豊かな土地にほかの木々をシェイドツリー(日陰樹)としてワイルドに生育しているコーヒーチェリーが収穫されずに放置されているのはもったいない!」
リリーさんは、CGNインターンの日本人の若者や暇そうにしている近所の若者やらを連れて、年末年始の超多忙なときに毎日エルシーさんの農園に出向きました。

「コーヒーの収穫を体験したい」とたまたま来ていた日本人アーティストも、容赦なく現地に向かう車に同乗させられ、朝から暗くなるまで収穫と加工作業を手伝いました。
もちろん私も足手まといになりながら(笑)、収穫サポート。
そして、その年のエルシーさんのコーヒー豆をきっちりすべて買い取らせていただきました。

(収穫の手伝いをして、すっかりエルシーさんと仲良しの反町(2018年末))

あれから3年。エルシーさんは笑顔で私たちを迎えてくれました。

「今年は裏年で収穫は少ないのよ」と残念そう。
そして、「新しくコーヒー豆の乾燥場を拡張したのよ」
と自慢げに乾燥場として使っているビニールハウスを案内してくれました。

コーヒーの収穫は1年に一度ですから、乾燥も1年に1回のみ。乾燥施設を使うのも2か月ほどになります。
「だから、それ以外の時期にも使える多目的ビニールハウスにしたのよ」とエルシーさん。
コーヒーを乾燥する棚のわきには菊が植えられていました。

「資金はね。コーヒーをCGNに販売した1年目の支払いを使ったの。2年目の支払いで、豚舎も作り始めたのよ」
ビニールハウスの隣には、コンクリートの立派な豚舎が建設中でした。

うれしいですねえ。
NGOであるCGNのサポートは、農家さんが自力でコーヒーからの収入を生かして自力で生きていけるための弾みをつけるためのものなのです。
その後はそれぞれの農家さんがコーヒー生産をきちんとビジネスとして成立させて設備投資も収入の一部から自分でして、自立してくれるのが何よりもうれしく感じます。
そのためのフェアトレードです。

(頑張っているエルシーさんを見てリリーさんも満面の笑顔。左が建設中の豚舎。)

 

1月 クラファン目標達成ですが・・・

シサム工房とコーディリエラ・グリーン・ネットワークが((CGN)行ってきたクラウドファンディング「世界のみんながしあわせになるコーヒー」は、第二フェーズを2022年1月7日に終了いたしました。

第一、第二フェーズを合わせて209名ものソーシャルペアレンツ(寄付者)の方から合計2,718,157円の支援をいただき、
目標額の2,650,000円を達成することができました。

また、64名のレコメンダー(推薦者)の方々からあたたかい応援メッセージをいただきました。
さらに、シサム工房が昨年実施しました「パルパーチャレンジ」で
シサムコーヒーを店舗やオンラインショップでコーヒーを購入することでサポートいただいた方々もたくさんいらっしゃいました。

新型コロナウィルスの感染がなかなか収まらない不安な日々の中で、遠く海の向こうの小さなコーヒー農家の暮らしと森に想いを馳せ、
行動を起こしてくださった皆様に心より感謝を申し上げます。

フィリピンでは現在フェーズ1と「パルパーチャレンジ」からの寄付金で活動を開始し、パルパー9 台を農家さんと農家さんの組織に配布しました。

これから、乾燥トレイの配布、簡易な乾燥施設の建設、ハラー(パーチメント除去機)の配布などを行っていきます。

こちらフィリピンの山岳地方では12月よりコーヒーの収穫が始まりました。
しかし、驚くことに前年の10%ほどのコーヒーしか実をつけていない大凶作となっています。

(この木はたった一つの赤い実!)

コーヒーはあの赤い可愛い実をつけるために、木が擁しているたくさんの養分を実に送り込みます。
例年、一生懸命実をつけたあとのコーヒーノキはもうへとへとで疲れ切っています。

それでも次の年にも実をつけるために、土壌が含む養分、雨期の雨の恵み、太陽の光を取り入れ、半年後には白い可憐な花を咲かせ実をつけます。

今回は、たぶん「1回休み!」というコーヒーノキの休憩期間なのだと思います。
人間同様、植物を含む自然にも休む時間が必要です。化学肥料や栄養剤を足して無理やり実をつけさせずに、ゆっくりとコーヒーノキにも休んでもらうのが自然の摂理だと思っています(同じくオーガニック・コーヒーの産地である東ティモールのコーヒー関係者に聞きましたが、やはり6-7年おきにほとんど実がならない年があるそうです)。
もうひとつ、いま世界中で叫ばれている「気候変動」の影響もあるかもしれません。

(反町も収穫の手伝いに行くも、実が少なくてあっという間に終わってしまう。)

コーヒーノキに関しては以前より「2050年問題」というのがコーヒー産業に関わる人の間で取り沙汰されています。
気候変動の問題で2050年には現在のコーヒー産地でコーヒーが栽培できなくなるのではないか?というのです。

実際、昨年は一大産地のブラジルで霜害、コロンビアで長雨でコーヒー生産量が激減しました。
「えっ?コーヒーが飲めなくなるかもしれないの?」
「もしかしたらコーヒーの値段が上がっちゃう?」
とコーヒー好きの人たちの驚きの声が聞こえてきそうですが、もっと大変な問題があります。
わかりますか?
世界中でコーヒー生産に関わる2500万人ともいわれる小さなコーヒー農家が仕事を失うことになるのです。

もしかしたら、そっちのほうがずっと大変なことではないでしょうか?

今回の大凶作を目の当たりにし、モノカルチャー(単一栽培)の恐ろしさを実感しています。

モノカルチャーでは生態系が失われ病害虫被害で作物が全滅する可能性があること、地力の低下により化学肥料に頼らざるを得なくなる可能性があることなどに加え、
人間の力ではどうにもならない自然災害が起きてその作物が被害を受けた時に農家の暮らしは瞬く間に立ちゆかなくなるのです。

私たちはフィリピン先住民の人たちが自給のための様々な作物とともにコーヒーを植え続けてほしいと思います(アグロフォレストリー=森林農法)。

そうすることで気候変動による災害にも屈しない、コミュニティとそこに暮らす人びとのレジリエンス(困難などに適応する力)が高まっていくと考えています。

==
コーヒー2050年問題についてより深く知りたい方はこちらGigazineのニュース記事を参照してください。

https://gigazine.net/news/20200812-global-coffee-crisis-coming/

12月 ついにパルパーを届けてきました

夏に開催していただいた「パルパーチャレンジ」キャンペーンとクラウドファンディングで
たくさんの方から応援いただいたお金で、ついにパルパーを購入しました。

パルパーは遠くミンダナオ島ダバオ市から、2週間をかけて先週バギオに到着。
さっそく一つ目のサポート先であるキブンガン町サグパット村のコーヒー農家に届けてきました。

サグパット村はバギオ市から車で約3時間半のかなりの山奥にあるサヨテ(はやとうり)の産地の村です。

実はサグパットの村では9月に新型コロナウィルスの感染者が爆発的に増え、
ロックダウン(封鎖)というもっとも厳しい措置が1か月も取られていました。

幸い現在、感染者は減っていて、日帰りならば居住者以外も訪問可能になりました。

バギオ市内でエコショップを営むピアコス・ファミリーと、写真家ニコさんをお誘いし、
私たちのNGOのスタッフとともに、ほんとうに久々のサグパット村訪問を行いました。

村ではジョセフ&カメリータ・シアットさんのご家族が私たちを迎えてくれました。

収穫が始まったばかりのサグパット村。
シアットさんの家の庭にもナチュラル・プロセスで加工されたコーヒーのチェリーが乾燥されていました。

「どうしてナチュラル製法でコーヒー豆を加工しているのですか?」という私たちの質問に、
「そっちのほうがおいしいから」とカメリータさんは恥ずかしそうに答えました。

いえいえ、そうじゃないと思います。
大変だったんです。本当に。杵と臼で皮をむくのが。

お届けしたパルパーは、ジョセフさんがうれしそうに箱を開けて組み立ててくれました。
そして、その朝にカメリータさんが収穫したコーヒーチェリーを使って、試験運用をしました。

もちろん私たちのスタッフは、ウォッシュド製法のプロセスをていねいにカメリータさんに復習講習しました。

「これでコーヒーの収穫後の加工作業が本当に楽になります。どうもありがとう」

心のこもったお礼の言葉とともに、コーヒーの木と一緒に植えられているレモンと新鮮なクレソンを山ほどお土産にいただきました。

応援いただいた皆様、どうもありがとうございました。

―――

クラウドファンディング「世界のみんながしあわせになるコーヒー」第一フェーズからの送金額は
1,224,927円(ペソにすると494,968ペソとなります)。

また、皆さんにご参加いただいた「パルパーチャレンジ」でのコーヒー売り上げからの寄付212,785円(93,625ペソ)を受け取りました。

クラウドファンディングでは引き続き第二フェーズの資金調達中です。
ご協力よろしくお願いいたします。

詳細とご寄付はこちらから↓
https://spin-project.org/projects/73

11月 山岳部のコーヒー生産地でのコロナ感染拡大

(ロックダウン中の集落のコーヒー農家の方たち)

コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)のコーヒー倉庫と苗場と作業場のある集落では、
8月以来8人の方が新型コロナで亡くなりました。
都市部での感染拡大から1年遅れです。

地方自治体政府でも感染拡大を抑えるために、感染者が出ると濃厚接触者を対象にPCR検査をします。
そして陽性者には自宅から外出禁止となり2週間の隔離となります。
しかし、日銭暮らしの貧しい村の人たちは、あっという間に毎日の食事にも困るようになります。
背に腹は代えられないと、調子の悪いのを隠して働きに出ます。

どこの国でも共通しますが、まずはお年寄りから感染の犠牲になりました。
先住民族の文化では亡くなった方とのお別れにあたって、日本の通夜のような風習で亡くなった方との思い出を語り合います。
それは先住民の方にとっては、何があってもおろそかにできない大切な儀礼です。
コミュニティで亡くなった方たちの通夜やお葬式で感染が拡大していったと思われます。

山岳地方では病院が少なく、比較的町から近い私たちの倉庫がある集落でも、一番近い病院まで1時間はかかります。
また、ロックダウンから1年半がたち、貧しいコミュニティではどこの家庭でも現金が底をついています。
そして、昨年来、公共交通機関はなくなったままなので、病院に行くにも、それなりの金額を払って車をチャーターしなくてはなりません。
少し具合が悪いくらいでは誰も病院には行きません。行けません。

(酸素補充を待つタンク)

そして、新型コロナの特徴で、あれよあれよという間に急に症状が悪化し、呼吸が苦しくなります。

そこで初めて自治体の保健課やその付属のクリニックに連絡がいくわけですが、
病院に連れていく間に緊急で使う行政の酸素ボンベはすでにすべてが自宅療養者に貸し出し中で、
そのまま自宅で亡くなる人も出ているとのことです。

(タンクの値段表)

酸素ボンベの価格は高騰し、平常時の3倍に。
酸素の補充に長い行列ができることもあるようです。

1本の酸素の補充にかかる金額は、最小単位の3リットルでだいたい彼らの日当くらいの金額とのことで、
決して安い金額ではありません。

この感染が徐々にこれ以上山奥に広がっていかないことを祈るしかありません。

CGNでは、酸素タンクをコミュニティに送るための寄付の募集を始めました。
ご協力どうぞよろしくお願いいたします。

≪クレジットカードでのご寄付≫
https://syncable.biz/associate/cordilleragreen/donate/

≪銀行振込み≫

広島銀行 向島支店(097)
口座番号:3077610
口座名:コーディリエラグリーンネットワーク日本事務局

10月  ラジオで学ぶコーヒー栽培

ここコーディリエラ山岳地方では、パンデミック前までは先住民の人たちの暮らしの向上のために
政府主催でさまざまなセミナーが行われていました。

しかし、昨年3月以降、感染拡大を防ぐため移動や集会規制が続いており、それらもすっかりストップしています。
そこで農業省が積極的に進めているのが、農家向けの「スクール・オン・ザ・エア」。
北ルソンで広く話されているイロカノ語の地方ラジオ局を使っての農業セミナーです。

(DZWTは人気のイロカノ語のラジオ局です。番組はライブなので緊張気味のリリーさん。)

2021年7月からはベンゲット州の農家を対象に、約3か月のコーヒー・コースも開始されました。
週3回、毎回約30分のラジオ番組を聞いて、コーヒーの栽培から加工、マーケティングまでを学びます。

さて、私たちのNGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」のフォレスター(森林官)であるリリーさんは、
講師としてこのラジオ番組に呼ばれています。

担当するのは2つのテーマ。
一つ目は「収穫後のコーヒーチェリーの精選方法」。
そしてもう一つは「コーヒー生豆の等級付け」です。

リリーさんは国際的なコーヒーの品質評価資格「Qグレーダー」を持っている
コーディリエラ出身のたった二人の先住民のうちの一人なのです。

(コーヒーの香味を評価するカッピング講習会の様子。右がリリーさん。)

ラジオなので誰でも聞けますが、事前に登録すると、最終回に行われるテストに参加できます。
それに合格したら、国のTESDA(技術教育技能開発庁)から修了証をもらえるのです!

このプログラムは、農業省コーディリエラ事務所がパンデミックで都会から山の村に戻った多くの若い人たちに、
コーヒー栽培に関心を持ってもらいたいと企画したとのこと。
ベンゲット州の10の郡からの登録者はなんと156人!

日本では「オンライン・クラス」「ウェビナー」ですが、インターネットの通信状態が悪い山岳地方では、
まだまだラジオが大活躍です。

それにしてもラジオを使ったテスト。いったいどうやってやるのでしょう?

出題はラジオの生放送でされ、回答は携帯電話のショートメッセージ(こちらではテキストと読んでいます)で送るのだそうです。
参加者156名の回答が一気に!
混乱せずに採点するのが大変そうですね。

(2018年にCGNが開催したカッピング講習会の様子。
農家の人や、政府の農政課の人も参加。先生はドイツ人のコーヒー専門家の方です。)

9月 決死のコーヒー苗木配達隊、無事帰還!

コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、昨年から継続して2つのアグロフォレストリー(森林農法)プロジェクトを行っています。

COVID-19の移動規制で、隣の州で始めたプロジェクトは事業地に苗木を運ぶことができず、事業期間を延長しました。
植林は雨季にしないと根っこがつかず枯れてしまうことが多くあります。
植林は雨に打たれながらやるのが、基本なのです。

(苗木をトラックから降ろす作業)

さて、こちらフィリピンも雨季に突入です。

今年は例年より雨が少ないようですが、1年延長した植林をこの雨季中に終わらせなければなりません。
プロジェクト担当の森林官のマイラは、事業地のタジャン町の許可を得て、3000本の苗木とともに決死の苗木配達の旅に行ってきました。

なぜ決死かって?
バギオから事業地のタジャンまで片道5-6時間かかるわけですが、パンデミック規制で隣の州での宿泊は許されておらず、24時間以内に帰ってこなければならないのです。

つまり、3000本の苗木をトラックに積んで、いくつもチェックポイントを通りながら5時間くねくね山道を走り、3000本の苗木を積み下ろします。
それだけでなく、昨年届けた苗木がちゃんと植えているか、育っているかをチェックして、またまた5時間かけて帰ってくるというわけです。

(ちょっと意外な気がするかもしれませんが、バナナとコーヒーを一緒に植えています)
早朝4時に出て、夜11時半に無事帰ってきました。よかった。

写真で見ると、1年間苗場でスタンバイしていた苗木は少々育ちすぎちゃったみたい。
大丈夫かなあ。ちゃんと育ちますように。

8月 東ティモールの手作りパルパーに続け!

トゥバ郡というところに、コーヒーセミナーに行ってきました。

講師は、森林官(フォレスター)の国家資格をもち、コーヒーに関しては香味の評価に関する国際資格Qグレーダーをもつリリーさん。

リリーさんのプレゼンは、苗木づくりから、古木の剪定の仕方、収穫後の加工まで、農家のリクエストに答えてあらゆる分野に及びます。
そのプレゼンのなかで、参加者のかたが、「おおっ」とざわついたのが、収穫したコーヒーの果皮をむく東ティモールの木製のパルパー(皮むき器)が紹介された時です。

(講師のリリーさん)

「これは木製ではないか?」
「これなら作れそうじゃない?」
「設計図ないですか?」
パルパーがない中、フィリピンの多くの農家さんは臼と杵という、米作りに使っていた道具でコーヒーの皮むきと殻取りの作業を手作業で行っているのです。
大変な重労働です。

(東ティモール製のパルパー)

実はこの東ティモール製のパルパーの作り方を学びに、コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、3人の農家さんと一緒にはるばる東ティモールまで行ったことがあります。
2016年のことです。

東ティモールの高地にはポルトガルの植民地時代に植えられたコーヒーノキがたくさんあり、それらは外貨を稼ぐことのできる数少ない作物です。
加工後の機材が不足する中で試行錯誤を繰り返し、農家の人たちが編み出したのが、この木材と廃品で作ったパルパーというわけです。
3人の農家さんは2日間じっくりかけで、村の名人からパルパーづくりを学びました。

パルパー作りの要は皮をひっかけてはがす金属部分。
ドラム缶の廃品を材料として作っていました。

3人の農家さんはさっそくフィリピンに戻ってきて、習ったパルパーを手作りしました。
近隣の人に作り方を教えたり、注文を受けて作ってあげたりしています。
CGNでも3人の農家さんを講師に呼んで、パルパーづくりの講習会を実施してきました。

それでも、ぜんぜんパルパーは足りないのが現状です。

収穫量が増えてきて、臼と杵の手作業ですべての収穫したコーヒーを処理できなかったり、収穫自体をあきらめる農家も出てきたのです。

そこで、シサム工房とCGNで農家にコーヒー加工の機器を贈るプロジェクトが始まりました!

↑これが今度のプロジェクトで送る予定のパルパーです。
皆さんのご参加を、お待ちしております!

詳しくは > こちら <

クラウドファンディング特設サイトは > こちら <

 

7月 コンペ受賞豆のオンライン・オークション

フィリピンでは、コーヒー市場を盛り上げるために数年前からコーヒー品質コンペティション(PCQC)が開かれています。

農家にコーヒー豆のサンプルを提出してもらい、国際的なコーヒー組織CQIの協力を得て、審査員が国際基準に則ってコーヒー豆の品質順位をつけるというものです。

今年も受賞者がアラビカ種部門、ルブスタ種部門でそれぞれ5月に発表になりました。

アラビカ種部門は上位11人が発表になりましたが、優勝以下4位まではミンダナオ産のコーヒー。
5位から11位までのうち5つにコーディリエラ産のコーヒーが食い込みました。

↑コーディリエラ産では最高得点をとったコーヒー農家。

さて、今年のコンペでの新しい試みは、オンラインのオークションで受賞した豆を販売するというものでした。

6月26日に行われたオークションの結果は驚くべきものでした。
コンペティションで1位を取ったアラビカ種の1キロ当たりの落札額は52.20ドル。
日本円で5700円以上の値が付いたのです。

落札者はフィリピンの人でしたから、国内産のコーヒー豆へのエールという気持ちもあると思います。
https://auction.pcqc.coffee/en/

「すごい値段がついてよかった」と思う一方で、少し複雑な気持ちになったのも事実です。
優勝したコーヒー農家と同じくらいの努力をして、コーヒーを栽培し加工している農家もたくさんいます。

SISAM COFFEEを生産している農家の人たちもそうです。
でも、1キロ5700円でコーヒーを販売できるわけではありません。

オークションはある種のお祭りみたいなもので、勢いや場の雰囲気でどんどん入札が進んで値が上がります。

大事なことは、農家の人たちの暮らしを長期的に安定して支えることのできる、持続可能なコーヒーの取り引きです。

もし、SISAM COFFEEの生産農家の人が「来年このコンペに参加したい」と言ったら「ぜひ挑戦してみて」と応援します。
でも、同時に、地道に努力を続けているそのほか大勢の農家の人たちを忘れません。

私たちはそういうフェアトレード・コーヒーをSISAM COFFEEとしてお届けしています。

6月 産地ではコーヒー「新豆」集荷の真最中!

ルソン島北部山岳地方でのコーヒーの収穫は、2月までです。

コーヒーの実はさくらんぼのような赤い実なのですが、
それを日本に輸出するための「生豆」(「なままめ」と読みます)にするには、
選別から乾燥まで、大変な手間と時間がかかります。

ようやく乾燥ができてすぐに出荷できるかというとそうではなく、
倉庫でしばらくの間、殻(パーチメントと呼ばれています)のついたままの状態で
「寝かす」(英語でキュアリングCuring)必要があります。

そうすることで、一つの袋に入っているコーヒー豆の品質が安定し、品質が保たれたままで輸送や貯蔵が可能になるのです。

コーヒーの収穫は1年に1回ですから、少なくとも1年間は「美味しさ」をキープしなくてはなりません。
キュアリングを終えたコーヒー豆は、出荷前に殻を剥き、農家さんが欠点豆を一粒ずつ手で選別します。

こちらの写真はシサムコーヒーの産地の一つ、カパンガン郡サグボ村での私たちの集荷の様子です。

農家組合の代表のジャネットさん(写真中央女性)が立ち会い、
一袋ずつ乾燥や選別がきちんとされているかをチェックします。

収穫が始まってからすでに半年。
ようやく「新豆」が完成したというわけです。

農家の人たちもちょっと名残り惜しいような表情で、
ミニトラック(フィリピンではジプニーと呼ばれています)で運ばれていく
手塩にかけて生産した生豆たちを見送っていました。

 

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執筆:  反町眞理子
Mariko Sorimachi

1996年よりフィリピン在住。
2001年環境NGO「Cordillera Green Network(CGN)」をバギオ市にて設立。
コーディリエラ山岳地方の先住民族の暮らしを守り、山岳地方の自然資源を保全するために、
環境教育、植林、生計向上プログラムなど、数多くのプロジェクトを行っている。
2017年、CGNのスタッフたちとともに、社会的企業Kapi Tako Social Enterpriseを創立。

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