
世界にひとつ
「めぐる」 第 5 話

忘れられない風景がある。
古い工房の屋上で、風になびく色とりどりのショール。
隣の屋上では、何やらチャパティのような食べ物が干されていて、
そこから一面に広がるのは、午後の陽気に包まれたネパールの街並みだ。

すぐそばでは、大きな桶のなかでリズミカルな足踏み洗濯が始まっている。
風景や音や匂いに包まれるひと時が、
こんなにも美しいと感じたのは、いつぶりだろうか。

2019年、この日、デザイナーのエンドウが訪れたのは、
ウールコットンのショールを作ってくれているドゥンディさん達の工房だ。

ここで生み出されるショールの数々は、
織りはじめるまでの前準備だけで、半月もかかるほど繊細な作業だ。
あらためて「手織り」という仕事のすごさに圧倒される。
屋上に干されていたショールのことを尋ねてみると、
生産の工程で余ってしまった糸を集めて、一枚一枚オリジナルで作ったものだという。

彼らの試みは、「リサイクル」という言葉をはるかに超えている。
こんなにも素敵なモノのめぐりかたがあるのだと、またもや驚かされる。
sisamのショールづくりにも、新しい風が吹いた瞬間だ。

この秋、そんな特別な手仕事が「カケラショール」という名前を持って
私たちの日々にやってくる。
工房のストックにあるたくさんの糸を使ってもらい、
ドゥンディさんや工房で働く人たちが、色合わせやデザインを考えてくれた。

世界に二つとして同じものがない、自分だけの愛しいカケラショール。
彼らが自由に、そして繊細に描いた色世界を
たっぷりと身にまとえる季節を心待ちにしたい。
FAIR TRADE LIFE STORE by sisam FAIR TRADE
タニ
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