わたしのsisamものがたり 1

世界に「好き」を散りばめて

今回のお話の主人公は、青森県在住のリリーさん。

sisamとの出会いは今から10年以上前。

リリーさんが兵庫県に住んでいたころのことだ。

妹さんのお買い物に付き添い、何気なく入ったのがシサム工房のお店だった。

その日をきっかけに再度お店を訪れたとき、
スタッフが身につけていた、くたくたになった生成生地のトップスが目にとまる。

長年愛用していることのわかる柔らかさと風合いが伝わってくる。

リリーさんが今まで持っていた「服は消耗品」という価値観のうえに
新しい雫が落ちた瞬間だった。

最初はキレイな状態だけれど、時間とともにどんどん古くなっていく。

でも、その古くなるということが、身に着ける人の気持ちによって
「育てる」ということに変わるのだということを、その時初めて感じたという。

何度もお店に足を運ぶごとに、「フェアトレード」の存在を知り、考えるようになった。

それまで、服を選ぶときの基準は、デザインやお得感。
その向こうで存在する、作った人や国のことを想う機会がなかったことに気付く。

例えば、インドで服を作りながら生きる女性たちの話を聞く。

一枚の服を通して、自分は幸せな時間を手にする。
それと同時に、彼女たちにも、幸せや力を届けることができる。

「平等」に生きていくということが、聞き馴染みのある当たり前の言葉としてでなく、
温度をともなって日常のなかに染み込んできた。

看護師の仕事をしているリリーさんは、自身の日常にも大切な変化があったと話す。

“日々現場に身を置いていると、どうしてもイライラしてしまうことがあります。
患者さんとのやりとりのなかでも「忙しいのに、なんで今？」とつい思ってしまったり。

医療現場において、誰もが平等だということをわかっていても、
気づけば、医療する側が上だという視点が、自分のなかに生まれる瞬間があるのかもしれません。

フェアトレードの存在を知って、そのことをふと立ち止まって考えるようになりました。

「みんな一緒」なんですよね。
地位とか立場なんて関係なく、いま同じ場所で、同じ時を生きているんだって。”

他人に対して、自分中心の感情が込みあげてきたとき、
相手の目線に心をうつしてみる。

もちろんうまくいくことばかりじゃないけれど、
目に映るこの世界が、少し平らになっていくような気がする。

服との付き合い方も、じっくりと考え、楽しめるようになった。

本当に良いなと思えるものを選ぶこと。
日常のなかに長く、大切に、その存在を感じることのできるように。

そして、服として着られなくなったものは、生地に還す。

“sisamの服は生地が良くて丈夫だから、最後はハギレをお掃除道具として使っています。

最後の最後まで使って、ちゃんと「さよなら」ができるようになりました。”

そんなリリーさんの愛用品は、なんといってもシサムノガウチョパンツだ。

“身長146cmの私は、大抵のパンツが長くてお直しをしないといけませんでした。
でも、ガウチョパンツはそのまま履ける。

そしてどの季節でも履けるんです。
ゆったりしているので、重ね履きをして真冬にも。

sisamの服と出会ってから、お出かけ着と部屋着の境目がなくなったような気がします。
古くなってきたら、お部屋専用にすることもあります。”

ほぼ365日、ガウチョパンツ。

もはやリリーさんのトレードマークになりつつある。

好きな服を着ていたら、自分が生きていくうえで「愛しい」と感じるものが
明確になってきたと話すリリーさん。

自分の「好き」に囲まれていたら、自分らしさって何なのか
小さな答えが日常のあちこちに見えてくるようになる。

それはきっと日々のささやかな幸せにつながるはずと、リリーさんは感じている。

“洗濯するたびに、服たちがくたくたになってくる。
それが嬉しいんです。”

そう笑顔で話すリリーさんの向こうには、
今日もたくさんの「好き」が散りばめられているはずだ。

 

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