
クラフトは生き方だ ~ルーパさん来日レポート~

今月、インドから「SASHA(サシャ)」の代表ルーパさんが6年ぶりに来日。
そして、サシャに初期から加わり、現在はシニア・デザイナーを担当しているスワガタさんも初めてシサム工房を訪問してくださいました。
今回の来日では、ルーパさんはサシャの歴史やフェアトレード、そして手作りのものにかける想いを。
スワガタさんは、カディやストール、木工品についての歴史や文化のお話をしてくれました。
今回のコラムでは、ルーパさんのお話をご紹介します。
スワガタさんのお話は次回のお楽しみに。

手織りストールやneemのカトラリーシリーズを届けてくれているパートナーであるサシャ。
1978年の設立以来、46年の間インドのフェアトレード界を牽引し続けています。
お話を聞く中で強く感じたのは、サシャにとって、手作り品には”愛”がとても大切であるということ。
その想いと共に、フェアトレードの仕組みでインドの手工芸品を世界の市場へと広め続けています。
その大きな原動力はどのようなところにあるのか。
今回は、サシャが歩んできた歴史を紐解きつつ、ルーパさんがお話してくれた以下の3つの大きなテーマを元に、皆さんへご紹介させていただこうと思います。
・動き続けること ~ものづくりの力を生み出す哲学~
・助け合うということ ~サシャが行うフェアトレード~
・クラフトは生き方だ
動き続けること ~ものづくりの力を生み出す哲学~
1978年の設立から、サシャは、作り手たちの技術や創造性が十分に表現され、それが認められるよう、クラフト・コミュニティの発展に努めてきました。
大事なのは、伝統的な技術や地元の素材をそのまま使うのではなく、現代の生活スタイルと融合させたデザインと機能性で世界へ打ち出すこと。
伝統と革新を融合させる温故知新の精神で、サシャは世界に認められるアイテムを作り続けてきました。
その原動力には、サシャの創設者であるシャッビーさん(本名:Subhashini Kohli(スバーシニー コーリー))から今も受け継がれる哲学があるといいます。
シャッビーさんが常に大切にしていた考え方が、
「不可能なことはない。とにかく動き続ける。そうすることで道は開ける。」
ということ。
殻を破り、あらゆることに挑戦して道を切り開いていく。それを身をもって実現していくパワーを持った人だったそうです。
そんな魅力を持つシャッビーさんはサシャのスタッフ達に多くの影響を与えました。
(左:シャッビーさん 右:ルーパさん / SASHA HPより引用:https://sashaworld.com/organization/history/)
ルーパさんは、そんなシャッビーさんと一緒に仕事をする中で、大きなエネルギーと喜びを感じたといいます。
「サシャの人たちはみんな家族のようなんです。お互いの文化を共有しながら良好な関係性を築き、とても心地よく仕事をすることができます。」
スタッフ・作り手たちがともに楽しく仕事をして、その中でアイデアが次々に出てくる。そしてそれを実現していく。
そのポジティブなエネルギーは、サシャが46年間常にインドのフェアトレードを主導する存在としてあり続けた原動力となっています。
「愛を持ち、信じること。そして楽しむこと。それさえあれば何でもできるのです。」
ルーパさんが語ったその言葉からは、サシャが変わらずに持ち続けるものづくりのパワーを感じることができました。
助け合うということ ~サシャが行うフェアトレード~

サシャのミッションは、インドの手工芸を活性化すること。
博物館などに収められるのではなく、現代でも使い続ける、使いたいと思うような手工芸品、そしてその文化を創り出すことを目指しています。
現在サシャが協力する生産者グループは100にのぼり、インドの12州で活動する約5,000人の作り手をサポートしています。

それぞれの作り手には伝統技術も想像力もありますが、一つ一つのグループの規模は小さく、日々移り変わる世界のニーズやトレンドに答えるためには、できることに限界があります。
そこでサシャは、WFTO(世界フェアトレード連盟)の定める10のフェアトレード原則を遵守しながら、職人さんたちのスキルを高めることや、使用する道具などをサポートすることで、経済的に恵まれない作り手たちがチャンスを得て、安心して働き続けられるよう支援を続けてきました。
サシャのフェアトレードの基本はパートナーシップ。
サシャは生産者のことをフェアトレードワーカーとは呼ばず、パートナーと呼びます。商品を買うバイヤーもパートナーです。
その関係性の中で、搾取したり差別を行うことは決して許されません。
生産者もバイヤーもパートナーとしてともに助け合いながらビジネスを行う。
協同という考え方を軸にフェアトレードの文化を築いてきました。
このような考え方のもと、サシャの支援によって、生産者たちが作るアイテムの品質は向上し続け、不良品が減り、新製品の開発や生産性の向上につながっています。
サシャはインドの手工芸を活性化する触媒のような存在なのです。

サシャには、ビジネス面でのサポートだけではなく、SSA(Sarba Shanti Ayog)という、生活面でのサポートを行う部門もあります。
お金の管理の仕方や融資、貯蓄の管理、環境対策を行うことで、生産者グループの健全な運営につながっています。
様々なサポートによって、職人さんたちは豊かな暮らしの中で、安心してものづくりを続けることができます。
そうして持続可能なものづくりを行うことは、文化的なアイデンティティを守り、愛情が込められた手作り品を生み出すことにつながるのです。
サシャのアイテムを使ってみて感じることは、その繊細な手仕事の美しさや、人の手で生み出されるあたたかな質感。
それは、サシャがフェアで人間的な関係性という土壌を築くことで成し遂げられるのです。
クラフトは生き方だ

こうして生まれた手作りの品々は、決して大量生産で早く作られたものではありません。
私たちの身近にファストファッションやファストフードが氾濫する現代。
安く一定の品質のものを買うことは簡単です。
ですがそのような時代にも、手作りされたものは失われることなく残り続けています。
「確かに、テクノロジーの進歩によって大量生産が可能になり、低価格で簡単にものを買うことはできます。
しかし、全ての人が、ものを買い続ける経済力を持っているわけではありません。
そして、地球環境を考えても資源には限界がある。
そこで際立ってくるのが手作りの価値ではないでしょうか。
自然の循環の中で手作りされたものを、直しながら丁寧に使い続ける。
今の時代だからこそ、ただモノが良いだけではない、手作りの価値があるのだと思います。」

「さらに、手作りのものたちには、愛が込められています。
それは大量生産されたものと取って代わることは絶対にできないのです。
手作りのものは、私たちの心と体を養ってくれます。
私たちはロボットではなく、人間なのですから、手作り品を愛することは私たちの魂にとって必要なことなのです。」
作り手が丁寧に手作りしたものには、その土地で生活し、大切にしてきた価値観や文化的な背景が含まれています。
それは、まさに作り手の生き方が込められたものだということ。
手作り品というのは、人間の本質に訴えかけてくるものなのです。
普段私たちが手作り品を手に取る時に、ああいいなとつくづく感じる。それはなぜなのか。
ルーパさんのお話を聞いて、その理由がわかった気がします。
ルーパさんから私たちへ

最後に、これからのことについてルーパさんにお聞きしました。
「未来のことはケセラセラですね。笑
ただ、例えば今後10年のことを考えてみると、若い人たちをサシャに迎えて、新しいことにどんどん挑戦していきたいと思っています。
ここ数年は、新たにチャレンジしたことがコロナ禍によってうまくいかなかったり、中々大変でしたが、一方では国内市場が成長したり、オンライン部門に注力することができたり、または環境に配慮した新たな製品が生み出されたりと、様々な実りがありました。
私たちの目指す方向性を考えると、インドのフェアトレードはまだまだこれから。
“動き続けること”という精神を変わらずに持ち続けて、フェアトレードをさらに広げるために新しいことに挑戦していきたいです。」
人間らしく、人間的な関係性の中で、愛を込めてものを作る。
サシャの行うフェアトレードは、それ自体が手作りを体現するものです。
サシャの哲学が揺らぐことはありません。
「Keep moving」
手作りに愛を込めて、サシャの挑戦はこれからも続いていきます。
最後にルーパさんからのメッセージを皆さんへお届けします。
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フェアトレードの仕組みは、利益より前に、人間性、そしてこの地球のことを考えて作られているものです。
そしてフェアトレードはチャリティではなく、ビジネスであるからこそサステイナブルなものなのです。
皆さん、フェアトレードをサポートし続けてください!それが全てです!
2024.7.8 Roopa Mehta
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フルカワ
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