わたしとsisam Vol.4 ~商品部ミズカミ~
繋ぐ場所
sisamは、そしてsisamが生み出す商品は、やっぱり優しい存在であってほしい。
そう語るのは、sisamのデザイナー歴7年のミズカミ。
インド、ネパールのパートナーとともに、この7年間で数えきれないほどの商品を生み出してきた。
“私たちが作っている衣料は、ある意味で一般受けではないのかもしれません。
トレンドを追いすぎるよりも、居心地がよくて、ありのままの自分を受け入れられるような服を作りたい。”
年齢や体型、好みなどを、何か決められた型に入れ込んでしまうのではなく、とことん自分らしく在ることを楽しめる服を。
“人とちがう”ということを豊かに受け入れられる。そんな一枚を生み出せることを、ミズカミは大切にしている。
“sisamの服に袖を通せば、色々な人の繋がりでその一枚ができていることを感じてもらえるはずです。
私にとってsisamは、優しさを繋ぐ場所。
sisamの服を買うことで、ありのままの自分を受け止められたり、自分以外の誰かのことを考えるようになったり。
そんな優しさの伝播が生まれるきっかけになると嬉しいです。”
自分のかけがえのない”個性”が、誰かのものづくりと繋がるとき、
私たちは他者とともに生きるということを、自然と感じとっているのかもしれない。
学生時代のミズカミは、世界の貧困問題を学んだことをきっかけに、「国際協力」に興味を持ち始めた。
商品開発に携わったのち、NGOで働き、さまざまな経験を積むなかで、自分がやりたいことは何かを考え続けた。
「国際協力」という途方もなく大きくも思える言葉を、自分たちの生活の形に変えて届けることはできないだろうか。
どんな人にも届くとても身近なものこそ、大切なのではないかと思うようになったと話す。
そうしてたどり着いたフェアトレードファッションの仕事は、ミズカミにとって一つの答えなのかもしれない。
入社をしてから、何度か現地を訪れる機会があったミズカミは、
その時の記憶の一つ一つを、日々の原動力に変えている。
エピソードは数えきれないほどある。
インド・ラクノー郊外にある刺繍村で暮らす生産者は、手作りの朝ごはんで歓迎してくれた。
小さな部屋のなかで、みんなでワイワイと食卓を囲む。
お昼ごはんだと暑いし、晩ごはんだと暗いし…と、村の女性たちで話し合いを重ねて、朝ごはんのおもてなしを考えてくれたそうだ。
彼女たちなりの方法で精いっぱいの敬意を表現し、日常の中に招き入れてくれた。
数年たった今も、その朝のことを時折思い出す。
「実は結婚することになって…」
「息子が大学に行けることになったのよ。」
出張に行くたびに、まるで近しい友人のように嬉しそうに話してくれる生産者の姿。
それはミズカミ自身のエネルギーとなって今も温かく残る。
お互いがお互いの生きる姿を、リスペクトしあう。
そこには、ただのバイヤーと生産者という関係を、大きく超えた何かがあるように思う。
“sisamの商品を、現地のものづくりを、より多くの人に知ってもらうために、良いものを作りつづけたいです。
これからも現地ともっと深い繋がりを作っていけるように。”
棚田を愛す
ミズカミは、自他ともに認める棚田LOVER。
私も普段から棚田を見つけると、必ずミズカミの顔が浮かんでしまうほど。
先日ミズカミは、長年夢見ていたベトナム北部の棚田を目指して旅立った。
目前に広がる雄大な棚田をみて、なぜこんなにも惹かれるのか、ようやく言葉にすることができたという。
それは、自然と人の一番良い形の融合だから。
山とか谷とか、その土地ならではの曲線とか、そこに在る姿をそのままにして、人の営みがほどよく重なっている。
そんな美しいいびつさを持つ風景が、ミズカミの心を掴んで離さない。
そのルーツをたどっていくと、幼少期まで戻る。
休日になると、いつも父が「自然遊園地に行こか」と誘ってくれたそうだ。
え、そんな名前の遊園地、関西にあったっけ?
滋賀県の地元から車で1時間ほど。
田んぼが視界いっぱいに広がり、フキノトウがあちこちに生え、サワガニたちも堂々と横断する、
父が命名した素晴らしき「自然遊園地」がそこにはあった。
ミズカミの原風景は、今も彼女のなかで雄大に広がっている。
“そうそう、最近、棚田を何回も味わえる術を身につけたんよ。”
インタビューの最後、ミズカミがなんだか嬉しそうに話しだした。
何かと思えば、びっくり。
棚田の刺繍だ。
仕事帰りの夕方、せわしなく人が行き交う駅ホームのベンチ。
そこでミズカミは、手の中で静かに棚田を作りだす。
小さな小さな棚田。
一針、一針、ミズカミが吸収してきたたくさんの風景が、布のうえで再び風をあびる。
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タニ
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