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ビシュヌさんの1日

~作り手とつながる8つのお話 第5話~

ネパール・マハグチで13年間働いているビシュヌさん(44歳)は、
20代の息子2人と夫と暮らしている。

ビシュヌさんの朝は早い。

まだ薄暗さの残る、朝5時に起床。
家の中の掃除がひと段落すると、火をかけてコトコトと丁寧に美味しいチヤを作る。
チヤとは、ネパールではチャイのことを言う。
チヤは毎日の暮らしに欠かせない飲み物だ。

6時、自らもらってきた縫製仕事を
1時間ほど集中して進めていく。

7時、家族との朝ごはん。
ネパールでは、しっかりと食事をとるのは一日2回が定番。
ビシュヌさんの家では、そのうちの1回が、朝の食卓だ。

ダルバード(豆のスープとご飯)に添えられているのは、
アチャールという野菜のお漬けもの。

発酵させたトマトのアチャールがなんとも美味なのだと、
スタッフがうっとりと思い出しながら話していた。

8時、マハグチのバスが、作り手が暮らす各地域をまわり、
遠く離れた仕事場を目指す。

バスのなかで流れる陽気なネパールミュージックとともに
ビシュヌさんは、毎朝1時間半ほどゆらゆら揺られている。

9時半から17時半までのワークタイム、
ビシュヌさんの腕が鳴る。
慣れた手つきで、一枚一枚、服の縫製を進めていく。

途中、2回の休憩タイムは、屋上にある食堂で。
マハグチの託児所にいる子どもたちも集まり、和やかなひと時が流れる。

夕暮れ時、渋滞でゆっくりとしか動かないバス路を経て、
家に帰るのは20時頃になるそうだ。

家でのすきま時間や休日も、彼女の家からは、
カタカタとミシン仕事を進める音が聞こえてくる。

どうしてそんなに働くの?とスタッフが尋ねると
「一日でもなまけたら、腕が鈍りそうだからね」とカラリと明るい答えが返ってきた。

マハグチで働く彼女たちの毎日の営みを
「働き者だ」という言葉にするだけでは、何か大切なものが抜け落ちてしまう気がする。

マハグチの仕事を続けてきたことで、
ネパール大地震で崩壊した家を、なんとか建て直すことができたと
嬉しそうに話すビシュヌさんの表情。

そこからは、ネパール社会で女性として、母として生きてきた彼女のたくましさと
13年間の強い誇りが感じられた。

 

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