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あの日のチャイを待ちながら
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~作り手とつながる8つのお話 第8話~
シサム工房を古くから知る人の中には、”インド・カラティマク”と聞くと、
美しい手刺繍を担当する女性たちを、はじめに思い浮かべる人が多いかもしれない。
でも実は多くの人たちの誇りある仕事が、1枚の服のなかで息づいている。
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生地のカット、縫製、刺繍、洗濯…
そんな全ての段階をチェックし、とりまとめている、
カラティマクの核ともいえる場所が、「DCセンター」だ。
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旧市街地にあるDCセンターのまわりでは、
たくさんの屋台が並び、その間を車やバイクが
音を鳴らしながら、通り過ぎていく。
これぞ”インドの喧噪”とも言えるエネルギーに満ち溢れた場所だ。
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私たちの出張時は、「ようこそ!ようこそ!」と
いつも笑顔で迎え入れてくれるDCセンターのスタッフたち。
外の屋台に、チャイを買いに走っていってくれたアショッククマールさんが
ビニールに入ったスパイスたっぷりの一杯を、小さな紙コップに少しずつ分けていく。
あくまで彼らのいつものやり方でしてくれる、最大限のおもてなしが
なんとも心地よく、嬉しい。
「作る側」と「買う側」。
チャイを飲んでいる時間は、そんなそれぞれの立場はいつのまにか消え、
大切な友人として、同じ目線で話すことができる。
チャイの御礼にと、日本から持ってきた抹茶オレを見た瞬間
「この緑の液体は、なんだ!?」とざわざわ。
飲んでもらうと、意外と好評だったようだ。
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そんなスタッフたちの笑い声が響き渡る風景が、
コロナ禍の日々によって、どこかに行ってしまった。
静まりかえったラクノーの町が、またたくさんの音で溢れる日を
誰もが待ち望んでいることだろう。
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最後に、DCセンターの縫製マスターであるラフィークさんの話をしたい。
この数か月、完全に生産がストップしてしまった状況下。
出来上がった衣服をなんとか日本に届けたいというカラティマクの想いを背負い
自宅から車で移動できないロックダウンが続くなか、
なんと90kmも離れた土地から、自転車でDCセンターまで駆けつけてくれた。
40℃を超える炎天下、一日30kmずつ、3日間も自転車をこぎつづけたラフィークさん。
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彼の努力がなければ、今シーズンの服は、日本には届いていなかったはずだ。
カラティマクの人々に、この数か月分の「ありがとう」を伝えに行ける日が来るまで、
今は日本で、私たちのできる仕事を精いっぱいしようと思う。
小さな紙コップに注がれる特別なチャイの味を、心からの楽しみに。
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タニ
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