旅する3分間「あの喜びの季節を」
ネパールの新年は、4月に幕が上がる。
毎年この季節になると、古都バクタプルの街が彩りや音で包まれる。
街を訪れる人々の五感が、大きく震え、たくさんの素敵なもので埋められていく。
力強く、美しい、ネパールのお祭りの始まりだ。
ここで暮らす人々は、お祭りが第一優先。
脈々と継がれてきた、信仰や文化の力強さがいまもなお、
彼らの「生きる」の真ん中に、大切に息づいている。
ダサインという最大のお祭りでは、商売道具を清める儀式があり、
作り手たちが、縫製ハサミを大切に供えていた。
私たちにとっては、お祭りがあることで仕事が滞ってしまうこともあり、
困り果てることもしばしば。
それでも、そんな彼らの「生きる」姿が、心から素敵だと思う。
ネパールのフェアトレードNGO「サナハスタカラ」代表チャンドラさんのお家。
チャンドラさんが、足から頭まですっぽりとはまってしまうほどの大きさだ。
お家から一歩外に出ると、一気にお祭りの喧騒に包まれる。
木彫りとレンガ造りの家々が並ぶ街並みのなかで、
道ゆく人々が大輪の笑顔の花を咲かせていく。
根っこが明るいネパールの人々。
その笑顔は、周りを巻き込んでいくほどのパワーが溢れている。
2015年、ネパール大地震により、バクタプルの街も甚大な被害を受けた。
技術や資金が整った日本と比べても、復興までの道のりは並大抵のものではなかったはずだ。
それでもその状況を受け入れて、できることを地道に進めていくネパールの人々の姿に、
私たち日本人が大きく励まされたことを、今でもよく覚えている。
2018年、地震から3年後の出張。
その日、私たちの視界に飛び込んできたのは、
復興建設の街なみのなかで、お祭りに集まるたくさんの人々の笑顔だった。
人はまた立ち上がることができるのだということを、誰もがその表情から語っていた。
ネパールではこの春、ネパールで採用されている太陽暦で2078年(ビクラム暦)を迎えた。
今は、たくさんのお祭りの様子を、過去のものとして語らなければいけない。
そのことに胸が痛むけれど、「きっと大丈夫だ」とも不思議と思える。
彼らのたくましさを知っているからだ。
空いっぱいにお祭りの音が鳴り響くその日が戻るまで。
バクタプルの街も、人も、待っている。
心に力強く根を張り、あの喜びの季節を待っている。
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タニ
FAIR TRADE PARTNER
Sana Hastakala / サナハスタカラ
from Nepal
ネパールの様々な境遇のお母さんたちが、積極的に新しい技術を習得しながら生活を支える。