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旅するコラム「あの日の車窓を」

合計すると、何時間移動しただろうか。

ノアーズアークのものづくりに携わる人々を訪ねるため、
インドの地に降り立った、商品部エンドウの記録だ。

中心部デリーから車で4時間の
モラダバードにあるオフィスがスタートライン。

目指すは、ベルを生産しているべハトという地だ。
ここから6時間の車の旅がはじまる。

白い服や帽子に包まれたムスリムの男性たちの
美しくかっこいい姿を目で追う。

掘っ立て小屋には、看板のかわりに力強いロゴがカラフルなペンキで描かれている。
そこで生きる人々が生み出した美術館のようで、心が躍る。

音楽やけたたましいクラクション。
車窓の景色は、次から次へと新しく刺激的な風景へと移り変わっていく。

エンドウがちらりとバックミラーを見る。

なんと…運転手がウトウトしているではないか…。

対向車ギリギリを走るインドの道路のど真ん中で
今にも眠りにつきそうな運転手。

エンドウの血の気が引く。
「Are you sleepy!?」

…返事がない。

隣に座っていた現地スタッフに助けを求めるが
「ノープロブレム!」の一点張り。

そんなこんなで、ひたすら肝を冷やしながら
道はまだまだ続く。

途中で立ち寄った、なんとも渋いドライブイン。

周りでは、ピーナッツの屋台や、かまどと一体型の屋台から
美味しそうな匂いが立ち上る。
つかの間の休憩タイムだ。

6時間の珍道中を経て、古代の町ベハトに到着。
素敵な音色を奏でるベルを作る生産者家族が待ってくれていた。

子どもたちの笑顔に、車中での疲れが一瞬吹き飛ぶ。

そこからまた1時間半かけて、サハランプールの地へ。

ここではウッドフレームを作る生産者が暮らしていた。

つかの間の訪問を経て、また車中の旅がはじまる。

再びモラダバードに戻ってきたのは、夜遅くになってから。

誰もが泥のような疲れに包まれた帰り道の車中。

静まり返った時間のなか、素知らぬ顔で音を響かせるラジオからは
えんえんと同じCMが流れていたことをよく覚えている。

たくさんの刺激と疲れを帯びた目に映った、あの車窓の風景。

あれから5年が経った今も、エンドウの心のなかで
輝きを放ち続けている。

 

FAIR TRADE LIFE STORE by sisam FAIR TRADE
タニ・エンドウ

 

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Noah’s Ark / ノアーズアーク

from India

北インドの鍛冶屋の町で、職人とその家族の暮らしを守り、伝統の技を次世代につなげる。

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