
世界を変えるこの1着(5)
~ファッションレボリューション特別コラム~
2021年4月24日。
今年も「ファッションレボリューションデイ※」の名のもとに、世界中で多くの人が声をあげている。
私は、sisamで働く8名のスタッフに話を聞いてみた。
彼女たちが日常のなかで紡ぎだす、等身大のファッションのお話。
これは私の話でもあり、きっとあなたの話でもある。
第5話 まとうのはメッセージ

フルカワの日々の着こなしを見ていると
「あぁ、服に愛されているなぁ」といつも思う。
ファッションというものに壁やルールを作らず、
おおらかに楽しめる心を持っているからかもしれない。

フルカワがシサム工房のオンラインストアにやってきたのは昨年のこと。
“もともとシサム工房のお店で、フェアトレードの品々をよく手に取っていて、
この仕事に携わる人たちのことをイメージしていました。
いざ入社してみたら、本当にイメージ通りで…。
自由や個性を愛する人たちが、フェアトレードの意義をそれぞれの心に落とし込みながらも、
楽しんで仕事をしている。
作り手やスタッフ同士、お互いを信頼しながら、自信をもって商品を伝えていっているんです。”
そう話すフルカワ自身が、実は誰よりも自由にフェアトレードファッションを楽しんでいるように思う。

ファッションへの考え方が変化してきたのは、大学で学んだ環境学がきっかけだと話す。
フルカワは、地球環境や様々な境遇のなかで暮らす人々のことを深く学んでいくなかで、
自分なりの「スタンス」を表現できる人になりたいと感じるようになった。
“東北の震災が起きた時期、サークルでフェアトレードの活動に関わっていました。
社会の「当たり前」が大きく揺らぐ経験をしたことで、
僕自身も日常の行動を見直していくきっかけになったように思います。”

毎日「着る」という行為を繰り返すファッション。
そこには、言葉ではない言葉を伝えていく、大きな可能性が秘められている。
「STAND UP」
「I AM A VOTER」」
シンプルなメッセージが書かれたTシャツを、肩ひじ張らずに軽やかに着こなし、日常を生きる。
フルカワが少しずつ形にしていったスタイルだ。

MENS、WOMENSのルールなんて、なんのその。
“あまり性別を意識しないで、服を選ぶことを大切にしてますね。
自分の直感に従って、これいいなと思ったものを積極的に楽しむようにしてます。”

そんなフルカワのアンテナに、この春フワリと舞い降りたのは、
ネパールで作られたタビビトコートだ。
“まずデザインが可愛いです。
羽織るだけで、一発でおしゃれにキメてくれる頼もしさがあります。
今の季節にもちょうど良いですし、真夏や真冬以外は
常にクローゼットに常置しておきたいアイテムですね。”

飽きの来ないデザインと着まわしのしやすさで、
老若男女、それぞれが思い描く「おしゃれ」を、おおらかに受け止めてくれる一枚だ。
柔らかなキャンバス生地が次第に馴染んで、
フルカワの日常の風合いを美しく染み込ませていくだろう。

“世界を変えていくには、まずは世界を想像することが大事だと思ってます。
その土地を旅している自分を想像する。
そこで暮らす人の顔を想像する。
僕にとってタビビトコートは、そんな大切なことを思い出させてくれる一枚でした。
何かモノを買う時、まずは誰かの顔を想像してみてほしい。
想像しながら、自分が「楽しい」と感じる服を選んで
日々を過ごしてほしいと思います。”

様々な出来事が、日々めまぐるしく自分の中に入り込み、そして過ぎ去っていく。
そんな世界で生きる私たちは
誰もが必ず、心に「メッセージ」を持っていると思う。
例えそれをうまく言葉にできなくても、
自由に表現できる、あなただけの大切な場所を一つでも手にできますように。
それは、フェアトレードファッションに携わる私たちが、
この先も決して手離すことのない大切な願い。そして原点だ。
FAIR TRADE LIFE STORE by sisam FAIR TRADE
タニ
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※ファッションレボリューションデイ
2013年4月24日、バングラデシュの「ラナ・プラザ」ビルが崩壊し、
そこで働いていた1100名を超える衣料労働者が亡くなった。
当時の労働環境や作り手の人権問題が明らかになり、
この事故をきっかけに、人々はファッションの裏側にある世界へ目を向け始める。
衣料生産の現場で働く人々の労働環境に目を向け、
適正な賃金が払われているかを訴える、世界規模のムーブメントが
ファッションレボリューションだ。
特に事故のあった4月24日は、「ファッションレボリューションデイ」とされ、
毎年、世界各地で多くの人が声をあげている。