世界を変えるこの1着(8)

～ファッションレボリューション特別コラム～

2021年4月24日。
今年も「ファッションレボリューションデイ※」の名のもとに、世界中で多くの人が声をあげている。

私は、sisamで働く8名のスタッフに話を聞いてみた。
彼女たちが日常のなかで紡ぎだす、等身大のファッションのお話。

これは私の話でもあり、きっとあなたの話でもある。

最終話  そこに意味を見つけて

服は、機能的なもの、体温調節を助けてくれるもの。
ファッションは、その一日を特別にしてくれるもの、気持ちを切り替えてくれるもの。

吉祥寺店で働くヒラカワは、そんな風に「服」と「ファッション」の役割を
まずは切り分けて考える。

“その日の気候から、着たい服を選びます。
日光アレルギーがあるので、日除けで身体を守ってくれて体温を心地よく調節できる服が重宝しますね。

その中からお気に入りのコーディネートを選んで、自分の気分を上げていくのが毎朝のルーティンです。”

「服」と「ファッション」。
それぞれに求めるものが、日常のなかで同時に寄り添ってくれたなら。

そんなヒラカワの願いを叶えてくれたのが、
ダブルガーゼやオーガニックコットン生地の衣服だった。

デザインを楽しみながらも、着心地にもこだわることのできる
フェアトレード衣料との出会いだ。

“私はこの仕事と出会うまで、カラフルな服をすすんで選ぶことがありませんでした。

でも、インドやネパールから届く、色彩豊かな衣料は
そのどれもが派手過ぎず、肌馴染みが良いんです。

まとっている色を褒められると、すごく嬉しいものなんですね。

フェアトレードファッションを通して変わった自分。

その楽しさをお客様にお伝えすることで、「私も新しい色にチャレンジしてみます」と言っていただけることも
日々の喜びです。”

誰かが、新しい自分と出会う瞬間。
そのささやかな記念日に立ち会えるのが、ファッションに携わる私たちの原動力だ。

自分は「旅人気質」だと話すヒラカワ。

荷物は少なめ。服も少なめ。
どの季節にも着まわせて、長く使えるものを選んでいる。

この春、そんな旅人の大切な相棒として選ばれたのは
ダブルガーゼ生地のVギャザーシャツワンピースだ。

一枚ではもちろんのこと、コートがわりに羽織れるのが嬉しい。

夏は日除けにもなり、空調の効いた室内着としてはちょうど良いそうだ。

そして、とにかく気持ち良い肌触り。
それに加えて、保温、吸湿、速乾といった、ありがたき機能性。

ダブルガーゼは、一度出会ったが最後。離れがたい恋人のような存在になってしまう。

ヒラカワは、明るい気分に底上げしてくれる、優しいイエローを選んだ。

先輩スタッフのおさがりでもらった同じ生地のワンピースも大事な一枚。

“着れば着るほど、馴染んで柔らかくなってきました。
毛玉取りで手入れしたり、キズや穴が開いたらパッチワーク刺繍をしたり。

愛着をもって、仲良く一緒に過ごしていきたいです。”

嬉しそうに愛用服のことを話すヒラカワ。
もしも服に心があったなら、彼女とともに日々を過ごすのはさぞ楽しかろうと思う。

そして、彼女が最後に語った等身大の言葉が、
私のなかに、すとんと、優しく着地した。

“全ての生産物に作り手が存在していること。

そのことを忘れないでほしい。
これは私自身にも言い聞かせたいことですね。

服だけでなく、食材だって、小さな雑貨だって、
今自分が手にしているものには、きっとなにか「意味」があると思うんです。”

”自分の力だけで手に入れたものじゃない。
誰かの恩恵にあずかっていることを心に留めて、「ありがとう」の気持ちを失わずに生きていきたいです。

もしかすると、ファッションレボリューションのことを知ることで、
「アンチファストファッション」という見方に捉えられてしまうこともあるかもしれない。

でもたとえどんなブランドだとしても、
自分が気に入って買ったものなら、自信を持って好きになってほしい。
そしてその一枚を、長く長く大切に使ってほしい。

服を販売する人として、そして一人の人間として、私がいま伝えたいことです。”

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3週にわたってお届けした、8人のファッションのお話。

きっと、あなたのお話も、私のお話も
日常のなかで少しずつ綴られていくと思う。

たくさんの人生を彩る、数えきれないほどの衣服たち。
誰かのストーリーをのせて自由にはためく音が、今日も世界中で鳴り響く。

4月24日は、ファッションレボリューションデイ。

あなたは、どんな一枚をまといますか。

 

FAIR TRADE LIFE STORE by sisam FAIR TRADE
タニ

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※ファッションレボリューションデイ

2013年4月24日、バングラデシュの「ラナ・プラザ」ビルが崩壊し、
そこで働いていた1100名を超える衣料労働者が亡くなった。

当時の労働環境や作り手の人権問題が明らかになり、
この事故をきっかけに、人々はファッションの裏側にある世界へ目を向け始める。

衣料生産の現場で働く人々の労働環境に目を向け、
適正な賃金が払われているかを訴える、世界規模のムーブメントが
ファッションレボリューションだ。

特に事故のあった4月24日は、「ファッションレボリューションデイ」とされ、
毎年、世界各地で多くの人が声をあげている。