冬の陽光
「めぐる」 第 7 話(最終話)
大地、森の木々、降り注ぐ雨や雪。
そんな自然の循環を表現したいと、
デザイナーのワタナベが美しい模様を考えた。
それを一枚のセーターとして着ることを叶えたのが、
ネパールの女性たちだ。
繊細で根気のいる指先のリズムで生み出してくれる品々は、
いつまでも飽きることなく、惚れ惚れと眺めてしまう。
はじめは一色の毛糸でお願いをしていたはずが、
ネパールから届いたサンプル袋を開くと、2色の美しい編み模様が目にとびこんできた。
おもわず指先でなぞってしまうほど、細やかな編み世界。
より難しい技が必要となるのに、作り手の女性たちが
わざわざチャレンジして作ってくれたのだ。
手違いから形になった、偶然の産物。
2トーンがなんとも可愛いメグルプルオーバーの誕生だ。
一枚のセータのはじまりは、広大な草原のうえで生きる羊たち。
青々と茂る草を食べながら、季節の経過とともに
羊たちがふわふわの毛に包まれていく。
その羊毛が、人の生活のなかに渡り
ねじって撚って糸になり、私たちの衣服が生まれる。
そして、自然が生み出したものだけで形になったものは、
やがて土に還ることができる。
手編み仕事やその品々は、生きもの達の営み、
そして自然のめぐりそのものだと思う。
この冬、大切な人たちと共に過ごすことが
当たり前だった日常が、少しでも戻ってくるだろうか。
人とのつながり方が変わってしまった今、
私たちは今まで見えていなかった、無数のつながりに気付くことができるようになった気がする。
誰かが作ってくれたものを使うことも、着ることも、食べることも。
一枚の手編みのセーターが、そんな私たちの心をほぐし、灯す、
冬の陽光となることを願って。
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タニ
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