旅する本 1
ページを開くと、旅がはじまる。
知らない風景のなかを悠々と飛び、誰かの人生や心の中に入り込んで…。
sisamのスタッフは、本で旅することをこよなく愛する人たち。
この休日、あなたに旅してほしい本を。
第1回は、商品部エンドウが選んだ大切な2冊のおはなし。
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いざ、インドの農村へ
「The Churki-Burki Book of Rhyme」
著者 Gita Wolf
絵 Durga Bai
インドLOVERなエンドウがまず選んだのは、この一冊。
どこかおおらかで、ユーモラスで、不思議なタッチの絵が目にとびこんでくる。
あぁインドだなぁと一目でわかる。
英語で綴られたこの絵本。
ワクワクした様子でエンドウが1ページ目をひらいた。
目にとびこんでくるのは、ゴンドアートとよばれるインド中央部に住む先住民族の絵だ。
人や動物、自然がまるで躍るように描かれている。
野菜を収穫し、魚をとり、美味しい料理をつくる。
子どもたちは楽しそうに遊んでいる。
インドの農村で生きる人たちの営みが、この絵本には詰まっているのだ。
読みすすめるうちに、わたしも気づけばゴンドの絵の一部となって、
土や木の匂いを嗅ぎ、動物たちの鳴き声に包まれていく。
23ページのにぎやかな旅へ、いざ。
はじまりの本
「なくなりそうな世界のことば」
著者 吉岡 乾
イラスト 西 淑
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「ドー」
ラワン語で「十分に火が通るまで弱火でコトコト煮込む」の意
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私たちにとって、言葉とは何なんだろう。
読み終えた後、どこか切ない気持ちと共に、そんなことを考えるきっかけを与えてくれる一冊だ。
岡山の出身であるエンドウもまた、生まれた土地のことばを愛する一人。
例えば、岡山弁で「しわい」とは、かみきれない固さという意味がある。
なぜわざわざその表現を言葉にしてしまったのか。
そこにはどんなルーツがあったんだろう。想像するだけで楽しくなる。
ある一つの状況や表現や感情が、その土地で特別な言葉になっていく。
そこには数えきれない人たちが生きてつないできたものが、象られているのだと思う。
なんて愛しいものなんだろう。
この本には、今にもなくなりそうなたくさんの民族の言葉が記されている。
なくならないでほしいなんて簡単に思うのはおこがましいのかもしれない。
でも、この一冊の向こうに広がるたくさんの民族の歴史や文化に目を向けるきっかけになるはずだ。
これは、終わりを共有するだけの本なんかじゃない。
誰かにとっての、はじまりの本なのだと思う。
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タニ