この春の刺繍は何かしら
立春の候、ふかふかガーゼ生地のシリーズが今年も届いています。
私はもうこのシリーズが好きで好きで、家でも外でもガーゼに包まれながら生活をしています。
お布団みたいに気持ち良いので、春なんて特にウトウトしてしまうだろうなぁと、寒空のしたで目を薄めている今日この頃。
そのガーゼ生地に寄り添うように縫い合わされているのが、手刺繍です。
インド・Kalatmak(カラティマク)が作ってくれているこのシリーズ。
“刺繍村”と呼ばれるファリディプール村とバラガンジ村に、作り手たちが暮らしています。
彼女たちの仕事場は、それぞれの住居。
家事や子育てなど、生活が密接にある場所で、子どもたちやヤギに見守られながら日々仕事をして、家族を養っています。
刺繍のデザインは、作り手が自由に縫いあげるものもありますが、そのほとんどはsisamのデザイナーとの共作です。
デザイナー・タカハタは、Kalatmakとの服作りは、他にはない特別なものだと話します。
「刺繍のある服と聞くと、エスニックなものをイメージする方も多いかもしれません。
でもsisamの衣服は、私たちの生活に自然になじむデザインのもの。
刺繍のワンポイントが、服のデザインを支え、引き立ててくれていると思うんです。
作り手の生活の気配と言うんでしょうか。
着る人がそれを感じて、ニッコリとしていただけたら嬉しいです。」
さて、この春に届いた刺繍モチーフは何かしら。
ちょっと服を広げて見てみましょうか。
春を待つ
シャツといえば、ロングセラーのこの一枚。
今年もスソカーブシャツが届きました。
毎年、背守りの刺繍が変化していることをご存知でしょうか。
今回は、春の訪れを告げる愛しい存在「フキノトウ」をモチーフに。
ある日、雪の中でぎゅっと丸まっているフキノトウを見かけたタカハタ。
その健気さとたくましさに、「なんて可愛いんだろう」とおもわず見入ってしまったそうです。
ただただ静かに春を待ち、ようやく現れた春の日差しのもとで微笑むように、のびのびと花びらを広げる。
そんな喜びの象徴が、春をむかえる私たちの背守りになればと選びました。
KL スソカーブシャツ をみる
花言葉と私たち
さりげなく前裾に2つはいった、お花の刺繍。
「平和」や「希望」を花言葉に持つデイジーの花と葉っぱです。
おおらかなガウンのなかで、可憐に揺れる手しごとのデイジー。
こちらはデザイナーのミズカミがモチーフを考えたもの。
私たちが花を愛でるとき、その小さないのちの姿から、
生きていくなかでの喜びや切なさを見つけることがあります。
花言葉は、自然と人の心を介した関わりのなかから生まれたものなのかもしれません。
小さな小さなモチーフに、この世界への祈りを込めました。
おおきな年輪
今季のテーマ「in Mother Nature」から、大地に目を向けたタカハタ。
恐竜が走り回っていたころも、人類が二本足で歩きだした頃も、そして高層ビルが立ち並ぶ今だって、大地は変わらずここにあります。
それぞれの時代の空気を吸い込んだ大地が、重なって重なって。
地球も大きな年輪のようなものなのかもしれない。
そんな壮大なお話を、小さくチャーミングなモチーフへと変えて。
生地の区切りを地層に見立てて、鉱石や古代の魚の骨を刺繍で描きました。
可愛い遊び心を散りばめながらも、すっきりとしたVネックラインによって、
大人のおしゃれ度をぐぐっと高めています。
踊るつくしたち
つくし、つくし、つくし♪
春の訪れを喜ぶ小さないのちが、胸元で踊るように並んでいます。
遠くからみると華やかな模様のラインにも見えるこのモチーフ。
近づけば、あ!と笑みがこぼれます。
身に着ける人だけじゃなく、共に過ごす人まで「春だなぁ」とつぶやきたくなる一枚です。
春の芽吹きを発見する楽しさを、このワンピースに込めました。
同じモチーフでも、刺繍の仕上がりは少しずつちがいます。
人の手のなかで形になるものは、その瞬間にしか生まれない個性をちゃんと持っているんです。
服のなかで呼吸をする小さな刺繍たち。
別に刺繍がなくたって、服の実用性は変わりません。
でも、やっぱり私たちは、この小さなモチーフに込められたものを大切にしたいと思っています。
この春も多くの人の日常に、小さな刺繍をたずさえた一枚の服が届くことを願って。
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タニ