わたしとsisam Vol.1 ~京都本店 アカイケ~
sisamは、今年で25周年を迎える。
私はまだそのなかのたった6年しか身を置いていないけれど、
この場所には不思議な引力があると感じている。
さまざまな理由から、sisamの扉を叩き、フェアトレードの仕事を暮らしの一部にするスタッフたち。
私は今でも彼女たちに、彼らに、興味が尽きない。
入社したてのニューカマーから、創業当初からのベテランまで。
そんなスタッフたちの姿を追いながら、sisamの25年間を辿っていこうと思う。
第1話は、入社9か月の京都本店スタッフ アカイケのお話。
世界を変える場所に
大学時代に、海外ボランティアに参加していたアカイケ。
世界の貧困地域や目を向けられていない人々と関わるなかで、自分は一生かけてこの場所に携わっていたいと感じるようになった。
で、「私には何ができるんだ?」
いつもそこで思考が止まる。
きっとそんな人がこの社会にはたくさんいる。
その時に「フェアトレード」というものが世界とつながる一つの選択肢になってくれるのだとアカイケは話す。
作る人も買う人も、実はお互いが本当に近い場所で生きていることを教えてくれるフェアトレード。
その出会いは、世界を変えるための一歩にもなる。
企業というものに漠然と苦手意識があり、2年間フリーターでアルバイトをしながら海外へ行くことを繰り返していたアカイケ。
昨年、ここなら誇りをもって働けると、sisamの扉を開いた。
「フェアトレードだけやってるんじゃないんですよね。例えば、ごみを減らすことにも本気で取り組んでいます。
一つの軸があって、そこに裏表がない。そんな仕事のやり方が好きだなぁって。」
sisamとは、アイヌ語で「良き隣人」という意味がある。
アカイケにとって、良き隣人とは何なんだろう。
「作る人」である多くのパートナーと関わるなかで、私たちも学ぶべきことがたくさんある。
アカイケがその一つとして挙げるのは、フェアトレードNGO「Creative Handicrafts」の取り組みだ。
インドのパートナーの一つであるこの団体では、働く人の多くがスラム街で暮らす女性たち。
NGOが力を入れているのは、ものづくりだけじゃない。
スラムの女性の70%が経験しているという「女性への暴力」の防止にも目を向けている。
護身術教室や、子どもへのジェンダー教育、夫を招いて夫婦の絆を再確認するセッションなど、
仕事をする場を生み出すだけじゃなく、働く人やその家族の尊厳、そして社会を変えていくことと本気で向き合っている。
根深い物事に対して、根気強く、変化を投じ続けていく。
どの国に生きていようと、その姿が私たちに「じゃぁ自分には今、何ができるか」と静かな問いを立たせてくれる。
「支援する側と支援される側。
社会では、どうしてもそうなっちゃう構造があります。
そのことに違和感を持ちつつも、私もまたどこかで”支援している”という感覚が簡単には抜けなくて…。
でもフェアトレードと関わることで、ちょっとずつ見えない壁が壊れてきたように思います。」
隣人になるということを、少しずつ自分のなかに染みこませていくアカイケ。
「あなたにとってsisamとは何ですか?」
この問いに対して、インタビューの最初に彼女が放った一言。
“とても大きい話になっちゃうんですけど…世界を変える役割をもっているもの。…だと思います。」
照れながらも、はっきりと答えたアカイケの言葉。
そこに込められた気持ちの温度こそが、フェアトレードを根っこから支えていくものだと私は思う。
家に帰れば推しがいる
京都に鴨川があってよかったと、アカイケは嬉しそうに話す。
大好きなスポットの一つが鴨川デルタ。
鴨川と高野川が合流する三角形のこの空間には、時空を超えた不思議な世界がある。
小さい子どもは川に入って遊び、恋人たちは愛を語り合い、学生たちはダンスの練習をしている。
そして夏にはおじいさんが上裸で寝転がっている。
アカイケもそこをお散歩したり、ベンチで寝転がるのが好きだそうだ。
そんなスローライフを静かに楽しんでいるかと思いきや、アカイケには予想外のエネルギー源があった。
「推し活」だ。
好きになるととことん突き詰めたいアカイケ。
推しとともに暮らすライフスタイルは、学生時代に好きになった嵐からはじまり、今はアニメ「ハイキュー」に埋め尽くされている。
アニメを観るだけじゃなく、音楽代わりに音だけを聞いて、セリフも全て言えるほどの徹底っぷり。
「推す」という感情は、一体何なのだろうと、私はまだその領域を知らないけれど、
目をきらめかせて話すアカイケを見ていると、なんて豊かなことだろうとも思う。
昼はフェアトレード。夜は推し活。
アカイケの世界のなかで、そこに矛盾するものなんてなく、
ただただ自分の心を動かすものを信じて、突き進む。
sisamに新たな熱風をおくりこんでくれるニューカマーは、
今日も京都本店に訪れる人たちを、とびきりの笑顔で迎えている。
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タニ