Dear many hands ≪前編≫
~拝啓、ラクノーの作り手たちへ~ episode.1-4
きっかけは、インド出張から帰ってきたスタッフの言葉。
「オンラインストアをよく見てくれている生産者がいたよ。
言葉はわからないけれど、どんな風に着てくれているのか写真を見るだけで楽しいって。」
嬉しさの一方で、湧き上がってきたのは「もっと知ってほしい」という想いでした。
シサム工房と共にたくさんの服を生み出してきた、インド・ラクノーにあるフェアトレードNGO団体「カラティマク」。
チカン刺繍と呼ばれる美しい手刺繍が母から娘へと受け継がれている地域です。
そこで生まれる一枚の服には、生地づくり、裁断、縫製、洗濯、ボタン付けなど、多くの人が関わっています。
ただ彼らは、その服が海の向こうの日本で、どんな人に、どんな風に大切に使われているのか、
知る機会がほとんどありません。
そこで今回、彼らのつくる服を愛用している人々のエピソードを、
「お手紙」として現地へ届けることにしました。
今回お話をうかがったのは、手刺繍の服とともに日々を生きる7人の女性。
生産者へのメッセージだけでなく、服やモノとの関わり方、フェアトレードに対する想いなど、
それぞれが語る等身大の言葉に、共感される方も多いかもしれません。
前半は、4人のエピソードをお届けいたします。
日本の読者の皆さんにも、ぜひ読んでいただきたいお話です。
お買い物に「選択肢」を
ニシムラさんが、初めてシサム工房のお店を訪れたのは5年ほど前。
それまでなにげなく耳にしていた「フェアトレード」という言葉。
手仕事の服たちと出会うことで、次第にその仕組みや背景を知るようになりました。
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“「What you buy is what you vote ~お買い物とはどんな社会に一票を投じるかということ」
シサム工房であの言葉を読んで、あぁその通りだなと。
自分が育てたい社会を、自分の好きなモノを買うことで、支えて、継続させていくことができる。
お買い物をすることで、まさにいま「投票」をしているんだという感覚を初めて持ちました”
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昨年、このワンピースをお店で見かけたとき
背中の手刺繍や、肌に自然とマッチしてくれる優しい赤色に一目ぼれ。
とにかく着心地がやわらかくて、なんだかハッピーな気持ちにさせてくれる一枚だそう。
友だちにお呼ばれした時や、休日のお出かけなど、日常のなかにあるちょっと特別な日に
このワンピースを身につけています。
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“ものの背景について考えるようになったことで、お店や商品を選ぶときも
なんでこんなに安いんやろ。と一旦考えるようになりました。
買い物するときの「選択肢」ができる良いきっかけになったと思います。”
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——— 生産者へ伝えたいこと ———
今日着ている服にも、可愛いお花の手刺繍がついています。
太陽にも見えるし、ひまわりにも見えてくるんです。
身に着ける人が楽しくなるような遊び心を、ありがとうございます。
皆さんが作ってくれた服があることで、私の休日がより素敵なものになっています。
友人にも「可愛いね」って褒められるんですよ。
できればいつか会いに行って直接お礼を言いたいくらいです。
様々な行程で、多くの人が関わって作られたこの一着を、これからも大事に着ていきたいです。
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背景を知れば知るほど、その服に宿った”味”のようなものが見えて、大好きになっていくと
ニシムラさんは言います。
“それが生産者の皆さんの幸せにもつながるし、本当に良い循環ですね。”
これからも手刺繍の服たちが、ニシムラさんの”日常の少し特別な時間”を彩るものであってほしい。
赤のワンピースを笑顔で身にまとう彼女を撮影しながら、心からそう感じた瞬間でした。
私ができる”行動”
2,3年ほど前に、父へのバレンタインへのプレゼントを探しにお店を訪れたツツイさん。
当時はフェアトレードのことはよく知らずに購入していたそうですが、
ある日、アイスクリーム屋でフェアトレードのバニラアイスを買ったことがきっかけで
その仕組みを初めて学んだといいます。
肩にたっぷりと刺繍がはいったカシュクールのワンピースが今年のお気に入り。
きれいな刺繍の模様をよりはっきりと見せられるカーキの色を選びました。
“ガーゼや麻など、自然素材の肌ざわりの良さも、sisamの服を着て知るようになったんです。”
普段からこれ一枚でさくっと着られる気軽さもあり、日常的に寄り添ってくれている夏のパートナーです。
他にも愛用している刺繍アイテムはたくさん。
少しずつ、お気に入りの一着を集めていっているそうです。
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“せっかく買うなら長く使えるものを。
少しずつでも、良いものを買っていきたい。
シサム工房を通して、SDGsの取り組みのことも知り、
一つ一つのモノをもっと大事にしようという想いが強くなりました。
まだフェアトレードのことをよく知らない人たちも
いきなり買わなくてもいいから、まずは知ってほしい。
興味を持って、自分で調べてみて・・・
最初から全部をする必要はなくて、少しずつ自分らしい形で始めることで
社会もだんだん変わっていくんじゃないかと思う。
フェアトレードは、私たちも素敵な服を買うことができるし、
生産者も手に職をつけて暮らしを支えていくことができる。
今の私が、まず始めていける”行動”なのかなと思います。”
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——— 生産者へ伝えたいこと ———
”いつも素敵な刺繍を見るたび、ワクワクしたり、癒されたり。
とにかく大好きです。
同じ商品なのにそれぞれちょっと違うというところも、好きなんです。
顔は見えないけれど、海の向こうの人たちの
一人ひとりの個性のようなものを感じることができます。
背景を知ってからは、ついつい友人にも「これはインドの手刺繍でね・・」と
話したくなるほど。
生産者のみなさんが一つずつ丁寧に作った
こんなにも素敵な服を着ることができて私はとても幸せです。
今までも大事に着ていましたが、これからもずっと大事に着続けます。
本当にありがとうございます。”
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今、自分が着ている服、使っているモノの背景を、誰かに楽しく語れる。
そんな光景が特別じゃなくなる未来への一歩が、ツツイさんの”行動”なのかもしれません。
世界と繋がる喜び
岐阜県でフェアトレードとロシアの雑貨屋「flamant」を営むタカハシさん。
現在はお店の移転準備のため休業中。
10月末の新しいオープンに向けて、”より素敵なお店づくりを”と準備に奮闘中の毎日です。
20年ほど前に、アルバイト先でフェアトレード雑貨と出会い、その素朴な可愛さや背景がみえることの魅力に
引き込まれていったといいます。
シサム工房の手刺繍やガーゼ生地のアイテムの中にも、たくさんの愛用品が。
ガーゼのワイドパンツは今で2代目。
色あせるくらい履きこんだ初代のものも、今でも部屋着として大切に使っているそうです。
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“ワイドパンツはもう好きすぎて、永遠に履き続けると思います(笑)
肌触りの心地よさや着心地はもちろんのこと、やっぱり手刺繍が好きなんです。
母が洋裁をする人だったんですが、子どもの頃は母が作った服を着ることが、なんだか恥ずかしかった思い出があります…。
でも自分が子どもの頃から手作りのものに慣れ親しんできたことが、今につながっているのかもしれないですね。”
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——— 生産者へ伝えたいこと ———
まずはそれぞれの仕事をされている方々全員への敬意の気持ちを伝えたい。
どの人が欠けても、この素敵な一枚には仕上がらない。
手刺繍を施すためには、まず木版で下絵を押しているんですよね。
また、パシッパシッと一枚一枚洗濯する様子を写真でみたときは衝撃でした…。
私たち日本人の感覚で合理的に考えれば他にもやりかたがあるのかもしれないけれど、
それも背景や文化の違いなんですね。
より多くの人の手が入っていることで、大切にしようという思いが強くなるように思います。
そうして出会った一枚の服を、どう自分は活かしていくのか。そんな楽しさもあるんです。
ここまでの道のりと同じくらい、自分の暮らしの中でこれからの道のりも大切にしたい。
一枚の服を通じて、そんな多くの人と繋がれていることが嬉しいんです。
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“着ることが楽しかったり、背景を想像して楽しくなるような服選びを。
皆さんにもぜひオリジナリティをもって楽しんでほしい。
世間の流行りではないところで、モノ選びができたら、もっとみんな楽しくなるんじゃないかな。
ここにいる自分だけじゃない世界と繋がれる楽しさを、知ってほしいです。”
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その言葉のとおり、タカハシさんの着こなしからは、センスのなかに潜む
素敵な遊び心を感じずにはいられません。
「今着ている服が、実はここではない世界と繋がっている。」
そんな心の眼を持ちながら日々を豊かに過ごす楽しさを、
彼女の装いが物語っているような気がしました。
そんなタカハシさんの世界観がたくさん詰まった「flamant」の新たなオープンを
私たちシサム工房も楽しみに待っているところです。
暮らしを楽しむことの大切さ
シサム工房がオープンした20年ほど前から通いつづけてくれているナカムラさん。
インタビューの当日に持ってきてもらったのは、まさにシサム工房やカラティマクの歴史がみえるような品の数々でした。
10年ほど前から愛用している白と黒のKURTAブラウスは、とても大切に使われていることが
手に取るだけで伝わってきます。
仕事に毎日のように着て行っていたという思い出の品。
退職した今は、ライフスタイルの変化に合わせて、手刺繍の服も世代交代をしたといいます。
かつて仕事の日々をともに乗り越えてくれたブラウスたちは
縫い目がやぶれた部分は自分で縫い直したりしながら、繰り返し繰り返し着つづけた特別な存在。
黒は色やけもしてきているけれど、この手刺繍をみると絶対に捨てられないそうです。
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“今でも、毎年必ず1回は着てあげることにしているんです。
それでまた丁寧に洗濯をして、来年まで大事にしまっておく。
この手刺繍を見るとやっぱり手放したくないなぁって。
モノの向こうに誰かの顔が見えることで、楽しく大切にできる。
大事にするときの気持ちがちょっと変わるんです。
仕事が忙しかった頃は、なんだか常に何かに追いかけられている状態だったように思いますね。
そんなときのお買い物の仕方も今と違った。
今ほどモノを買ったり使ったりすることを楽しむことができなかったな。
この年齢になってやっと楽しめるようになった気がします。
これからは、刺繍などの手仕事をじっくり見たり、モノを長く使っていくことに工夫しながら楽しんだり、
そんな生き方がしたいな。
私は今になってそのことに気付いたけれど、
今の若い人たちには働きながらでも、そんな大切なことを楽しめるような社会になってほしいです。
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——— 生産者へ伝えたいこと ———
”カラティマクの皆さんとシサム工房が、商品を作りだした頃から
ずっと大切に使っています。
毎年少しずつデザインや刺繍の形を変えてくれているのも、嬉しいです。
きっと縫い手の人も世代から世代へ受け継がれながら、
変わっていっているのでしょうね。
お店が始まった時から、ずっと感動させてもらえる品や欲しいものがあるんです。
これからも、毎シーズンそれを楽しみにしていきたいです。”
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ナカムラさんの話す”暮らしを楽しむ”ということは、仕事や家事など毎日の暮らしに追われていると
時に難しいこともあります。
でも例えば、今日着ている服の刺繍にそっと触れてみて、ぽこぽことした感触を楽しんでみたり、
一針一針、丁寧に糸がとおされる光景を想像してみたり…。
そんなたった数秒間のことでも、日々目にうつる自分の世界を少し豊かにしていけるのかもしれません。
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