Dear many hands ≪後編≫
~拝啓、ラクノーの作り手たちへ~ episode.5-7
きっかけは、インド出張から帰ってきたスタッフの言葉。
「オンラインストアをよく見てくれている生産者がいたよ。
言葉はわからないけれど、どんな風に着てくれているのか写真を見るだけで楽しいって。」
嬉しさの一方で、湧き上がってきたのは「もっと知ってほしい」という想いでした。
シサム工房と共にたくさんの服を生み出してきた、インド・ラクノーにあるフェアトレードNGO団体「カラティマク」。
チカン刺繍と呼ばれる美しい手刺繍が母から娘へと受け継がれている地域です。
そこで生まれる一枚の服には、生地づくり、裁断、縫製、洗濯、ボタン付けなど、多くの人が関わっています。
ただ彼らは、その服が海の向こうの日本で、どんな人に、どんな風に大切に使われているのか、
知る機会がほとんどありません。
そこで今回、彼らのつくる服を愛用している人々のエピソードを、
「お手紙」として現地へ届けることにしました。
今回お話をうかがったのは、手刺繍の服とともに日々を生きる7人の女性。
後半は、3人の女性のエピソードをお届けします。
前半は >> コチラから <<
日本の読者の皆さんにも、ぜひ読んでいただきたいお話です。
暮らしに息づく伝統技術を
4年前から、島根県出雲市でフェアトレードショップ「fuku・mimi」を営まれているモリヤマさん。
学芸員の経験もあり、昔からインドなどの民芸品・美術品に触れる機会が多かったモリヤマさんは
美術品としてではなく、私たちの暮らしに息づく「日常品」として
彼らの技術を継承しているフェアトレードの品々に、次第に魅かれていきました。
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”もともと私自身、道具などの日常品は、手間暇がかかっていそうなものを意識して購入していました。
でもそういえば昔は、洋服ってあまりそんなこと考えていなかったですね。
やっぱりデザインや価格で選ぶことが多かった。
でも背景が見えてくると、こんな風に作っているから、これだけの値段がする‥ということがよくわかる。
お店でも、ただキレイにディスプレイされているだけでない、その背景にある本当の魅力を伝えることができます。
お店のお客様も、そんな話をしているうちに、だんだんと興味を持ってくださるようになりました。”
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昨年購入したガーゼ生地のワンピースは、まさにモリヤマさんの日常に息づいている一枚。
着心地の良さはもちろんのこと、洗濯でもじゃばじゃば洗える気軽さ。
それだけでコーディネートが完成する頼もしさ。
そして背中の手刺繍が、そんな一枚の魅力をより特別なものにするワンポイントになってくれています。
このワンピースを手にとると思い出すのは、お店の看板犬としてみんなに慕われていた愛犬のこと。
昨年12月に看取るまで、愛犬と過ごす残された時間のなか、
せめて元気を出してもらおうと、この赤のワンピースをよく着ていたそうです。
楽しい思い出も、時には悲しい思い出も、
一枚の服もまた、持ち主の大切な時間を乗せながら、共に旅をしているのかもしれません。
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——— 生産者へ伝えたいこと ———
”手刺繍のある服を身に着けることで、私たちは気分をぐんと上げることができます。
一つの服でも、色々な部分をそれぞれ担当する人がいると聞いています。
みんなで力や知恵を出し合って、一つの伝統や文化を継承していっているんですね。
逆に日本では、そういうものがごく一部の人のものになってしまっているように思います。
本当はもっと日常に存在するもののはず。
でもインドの生産地では、それだけの素晴らしい技術をもっている人がたくさんいて、
私たちの生活にこうやって自然に取り入れることができる。
それはすごいことだと思うんです。
どうかこれからも続けていってほしいです。“
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モリヤマさんとの話の中で印象的だった言葉があります。
それは「モノを選ぶとき、どこか一つでもいいからこだわりを持つ」ということ。
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″どこかに一つ「本物」を。
本物と感じるものは人それぞれ違うと思います。
それが手刺繍だったり、例えばボタンだけでも。
プラスチックじゃなくて、貝ボタンだからこれにしようとか。
今の世の中ではたくさんモノがありすぎて何を買っていいかわからないですよね。
でもそんな自分なりの指標やこだわりを一つでも持っていると、楽しくなるんじゃないかなと思います。
みんながそれを少しずつでも大切にすることで、
例えささやかなことでも、世界各地にある大切な文化や営みが続いていくきっかけになるかもしれません。”
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そんな自分にとっての「本物」は何なのか。 私も楽しみながら見つけていきたいなと思います。
小さな”選択”の集まりが、私
ヘナ染めのオレンジヘアーがチャーミングなオカベさんは、
シサム工房にとって、お店ができた20年前から通い続けてくれている旧友のような存在。
当時は、フェアトレードという言葉も知らず、全然意識していなかったそうです。
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“それでも何か魅かれるものがあったのは、母の作った服で育ってきたことも関係してるのかな。
何か無機質ではない不思議な温かさを感じていたんだと思います。
肌触りや、生地の織り方、刺繍など、「あぁ、人の手を通しているんだな」って。”
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10年以上前から愛用しているKURTAブラウスは、なんとも味のある空色。
でも実ははじめは藍色だったというから驚きです…!
生地の絶妙なムラからは、オカベさんの過ごしてきた時間とともに、少しずつ色が育ってきたことが伝わってきます。
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“「作り手の顔がみえる」と言葉にするとなんだか固い感じになってしまうけど、やっぱりそこが魅力ですね。
一つ一つ違う個性、織りキズだったり染めムラだったり、やっぱり人がちゃんと作ってるんやと思えるし、
そんな服が愛おしくなる。
私たちの生活の中でも、服がその人の暮らしに合わせて汚れがついたり、色がおちていったり。
そういうもの全部含めて、その人の服というものなのかな。
シサム工房の服たちは、そういうことを教えてくれているように思います。”
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——— 生産者へ伝えたいこと ———
“丁寧に作られたものを、大切に着て、
時々作られた風景を思い浮かべています。
この服とともに過ぎてきた思い出も、今着ていることも、ぜんぶ愛おしい時間やなと思います。
これからもあたたかな服を、楽しみにしています。
実際にお会いして、作っているところも見てみたいな。そうしたらもっと好きになるやろな。”
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オカベさんは、もう自分では着られなくなった服でも、捨ててしまうのではなく
大切にしてくれる人にゆずって、服を「巡らせている」といいます。
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“そんな強い意志というものがなくても、普段何気なく自分が着ているもの、自分がふと手にとったもの、
それも一つの意志表示なんやなと感じるようになりました。
今日これを着ようと思ったのも私。
身に着けているもの、使っているもの、そんな小さな意思表示も全部含めて、今日の私、今の私なんだと思う。
みんながそういう感覚を持つようになったら、なんか色々なことが優しくなっていくんじゃないかな。”
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インタビューの帰り道、そんなオカベさんの言葉を思い出しながら
今日なにげなく自分が選んで着てきた服を、あらためて眺めてみました。
私が着ている服も、今日の私の一部だということ。
そう感じることができれば、服やモノと共に生きることがもっと楽しく、豊かになるような気がします。
かけがえのない喜び
最後のエピソードは、カラティマクの生産者とともに
商品を開発しているスタッフのミズカミ。
大学時代、授業でフェアトレードについて初めて学んだとき、
「すごい仕組みやな!」と心を動かされたといいます。
その時に芽生えた「いつかフェアトレードの仕事をしてみたい」という想いが
最初に叶ったのは、社会人7年目。
NGO団体のフェアトレード担当として働くようになったとき、その難しさに直面したそうです。
生産者のことを想うと、絶対に売りたい!と思うけれど、品質の問題が壁として立ちはだかりました。
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“お互い「仕事」として、そして「商品」として成り立たなければ、
うまくまわらない仕組みなんだということを痛感しましたね。
だからこそ、そんな商品を一緒に開発していける人になりたいと感じるようになりました。”
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シサム工房に入社して、初めてインドのラクノーに訪れたのは昨年のこと。
天井の低い半屋根裏のような場所や、乾季には45度を超えるなかでの作業。
想像以上に過酷な環境だと感じたといいます。
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“刺繍村に初めて訪れた時、急に雨が降ってきて、
ヤギやアヒルと一緒に、みんなで雨宿りをした思い出があります。
初めはシャイだった生産者の女性たちとも、そこでぽつぽつと会話が生まれて、少しずつお互い打ち解けて
いきました。
ある女性は、「この仕事のおかげで、娘に結婚式のドレスを買ってあげられたのよ」と嬉しそうに話してくれて。
「日本の成人式でも親が晴れ着を用意してくれる習慣があるんだよ」と伝えると、
「なんだか通じるものがあるね」と二人で笑い合って。
あぁ私たちは”同じ”なんだなって改めて感じることのできた時間でした。”
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そんななか、嬉しかったのは、彼らのおもてなしの心。
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“「自分が働いている場所まで見に来てくれたから」と縫製担当の男性が
外までチャイを買いに走っていってくれたり、
刺繍村のとある家で、刺繍の作り手である女性たちが各家庭の一品をもちよって
普段食べているものより豪華なご飯をふるまってくれたり。
自分たちができる精一杯のおもてなしをしてくれました。”
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2年前のカシュクールトップスは、ミズカミ自らが愛用している一枚。
背中にも全部刺繍がちりばめられていて、まさに彼女たちの手仕事を堪能できます。
ミズカミはいつも、ジーンズやボーイッシュなパンツと合わせて、楽しんでいるそうです。
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“この刺繍を一つずつ手で施しているということが、いまだに信じられない。それくらいすごい技術。
彼女たちは、家で仕事をしています。 それも家事や子育ての合間に。
家電やスーパーマーケットが当たり前にある日本とちがって、料理一つするのも準備が大変だし
時間もかなりかかります。
その中で少しでも子どもを学校に行かせられるよう、刺繍の仕事をがんばっているんです。
ただ何より知ってほしいのは、彼女たちは、刺繍の仕事が好きで、誇りに思っているということ。
皆さんにも、そういう人たちが作っているんだということを、少しでも思いながら着てくれたら本当に嬉しいです。”
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ミズカミが、この仕事をしていて心から喜びを感じるとき。
それは、国や言語、立場なんて関係なく「信頼し合えた瞬間」だといいます。
目と目で想いが通じる瞬間。なにげない会話で笑い合えた瞬間。
隣人として繋がることのできる、かけがえのない喜びが、
フェアトレードの仕事の原点なのかもしれません。
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——— 生産者へ伝えたいこと ———
“いつも素敵な服を作ってくれて、ありがとう。
ありがとうという気持ちが本当に何より大きいです。
皆さんにとって私たちは、「買ってくれる人」という存在かもしれないけれど、
それと同時に「友人」のようにも思ってほしい。
きっとスタッフも、お客さんも、同じように思ってくれているから。
そしてこんなすばらしい技術を持っているということを、誇りに思ってほしい。
機械には決してできない、あなたたちの手だからこそできることです。”
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今日皆さんが着ている服。
どこで、誰が、どんな想いで作っているものなのか。そんな背景を想像したことはありますか。
私たちの中にある想像力を、日々の暮らしのなかで広げることができたなら
服やモノとの付き合い方が、もっと楽しく豊かなものになるかもしれません。
今回の7つのエピソードは、来年ラクノーの地へ届けにいこうと思います。
持ち主の想いが、作り手にちゃんと届く社会に。
彼女たちのメッセージが、そんな大切な一歩となりますように。
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タニ
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