いま読みたい本
sisamのスタッフは、本好きが多い。
それぞれの本の趣味がまたなんともバラエティ豊かで、いつか事務所の片隅に
sisam図書室を作ってもらえないかとひそかな夢を抱くほど。
今日は、2人のスタッフの「いま読みたい本」を紹介します。
日常においしい余韻を
最近のワタナベは、毎朝の時間に30分の猶予を残している。
なぜなら、小説の続きが読みたくてしかたないから…。
もともと小説をあまり読まないワタナベが、ここまでハマってしまったのが
高田郁さんの「みをつくし料理帖」シリーズ。
ときは、江戸時代。
女性は料理人にはなれないと言われていたこの時代に、
主人公の”澪”が、さまざまな困難を乗り越え、料理人を目指していくお話です。
“それぞれの章に、キーワードとなるご飯が出てくるんです。
この前、三つ葉の料理の話を読んでいて。
気づいたら、その日の食卓には、三つ葉料理が並んでいました…。”
小説の魅力は、ここではないどこかの世界に、ほんのわずかな時間でも
心を置けるということ。
そして、その世界の余韻が、日常の時間に、豊かに残る。
それが「みをつくし料理帖」シリーズのおいしい部分なのかもしれません。
“物語に出てくる人は、みんな人情あふれる人達。
困った時こそお互い様精神で、助け合いながら乗り越えていくんです。
自分もつらいのに、自分より相手を思いやる気持ちに溢れている。
今の私たちの状況とリンクする部分が多くて、あぁ私もがんばらないと！って思えます。”
「みをつくし料理帖」は、10巻以上にわたる長い物語。
ワタナベは、その一冊一冊に元気をもらいながら、今日も大切にページをめくっています。
声を手繰り寄せて
この日、オハラが紹介してくれたのは、一冊の写真集。
私も手にとるなり、表紙に浮かぶ作品の力に、
吸い込まれていくような感覚をおぼえました。
カナダ先住民の活動家であり、芸術家でもあるボー・ディックの作品集。
彼は先住民の伝統的な彫刻作品を多く世に残しています。
中でも「お面づくり」は有名な活動の一つ。
“僕は正直、カナダ先住民の生まれ変わりなんじゃないかなと…。
勝手にそう思ってしまうほど、彼らの表現方法には昔から魅かれるものがあるんです。
作品としての魅力だけでなく、自然と私たち生き物との関係のありかた、
そしてそのメッセージを宿す表現の形に、共感するものがあるのかもしれません。”
オハラは以前から、(家族に怒られないように)こっそりと、少しずつ収集しているものがあります。
それは、カナダの先住民文化と深い関係があるトーテムポールのレプリカ。
昔から様々な形で受け継がれ、未来へと残されてきた大切なメッセージの一つです。
“今、世界中が、目に見えない大きな生きものと戦っているような感覚。
こんな状況だからこそ、人としての在り方をゆっくりと考えられる時期なのかなと思います。”
“今”を生きる私たちは、”今”を必死に見渡して、答えを見つけようとしてしまいます。
でも例えば、オハラにとってのトーテムポールだったり、誰かにとっての一冊の本だったり。
日常にそっと置かれた、たくさんのルーツに気付き、
それを手繰り寄せることで、私たちは多くの人の声を聞くことができる。
オハラの話を通して、そんな不思議な心強さが、自分の中にかすかに灯ったような気がします。
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タニ
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～今日ご紹介した本～
・みをつくし料理帖シリーズ 「八朔の雪」「花散らしの雨」（ハルキ文庫）
著：高田郁
・「Beau Dick: Revolutionary Spirit」
著：Justin Barski、他
