コーヒーの花
SISAM COFFEEの森から 第1話
今、海の向こうの生産地はどんな状況なのか。
シサムのパートナーたちの暮らしは、どのように変化しているのか。
ご心配いただいている皆さま、本当にありがとうございます。
各地からの情報を、現地から、臨場感あふれるコラムでお届けしていきます。
その中でも、なかなかニュースでも耳にすることないフィリピンの人々の現状。
「SISAM COFFEE」のコーヒー豆を届けてくれている
環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」の反町さんよりレポートが届きました。
今回は、フィリピンはルソン島北部のバギオからのレポートです。
コロナウィルスの感染拡大で、世界中のあらゆる人々、あらゆるエリアで、
想像を絶する影響が出ていますね。
もう、自分の毎日の暮らしと明日のことだけで精いっぱいになっちゃいがちですが、
こんな時こそ、海の向こうのフェアトレードでつながりのできた人たちの暮らしに
想いを馳せてみるいいきっかけかもしれませんね。・・・
コロナウィルスの感染拡大はここフィリピンでもマニラを中心に深刻です。
強権派の大統領の命令で日本よりずっと前に「コミュニティ防疫」という名の
1カ月間の封鎖(ロックダウン)がルソン島全土で始まりました。
4月13日までのはずでしたが、まだまだ感染者が増えつづけているということで
4月終わりまでに延長されました。
日本と違って公共交通機関がすべて停止していて、外出が厳しく制限されています。
「バギオ市の検問所にて熱を測っているところ」 ©Ompomg Tan(フェイスブックより)
SISAM COFFEEの栽培をしている農園は、
マニラからはるか北に車で10時間の山岳地方のベンゲット州にあります。
マニラから山岳地方への玄関口となっているバギオ市(私たちのオフィスもここにあります)は、
別荘やホテルがたくさんある、いわば日本の「軽井沢」のような場所。
マニラの人がコロナをもって避難してくる前に
さっさと山へ登ってくる3本の道にチェックポイント(検問)を設置。
バギオ在住者以外の人が市内に入ってくるのをストップしました。
おかげでいままでの全感染者は15名。
そのうち12名は退院し、いまは3名が入院中ですが、感染者の数は増えていません。
「SISAM COFFEEの生産地の一つ、サグボ村」
SISAM COFFEE を栽培しているコーヒー農園はバギオ市のお隣のラ・トリニダード町から
さらに奥に入ったころにあります。
ラ・トリニダード町では3月に3人感染者が見つかりましたが、
その後は新たな感染者はなく、今は一人が入院しているのみです。
「そろそろ外出させてくれてもいいのでは?」
と思いたくもなりますが、市政府も州政府もまだまだ慎重で、町の動きは止まったまま。
あらゆるところで市や町や郡の境が封鎖されていて、人の往来もほぼできません。
唯一行き来しているのは、ベンゲット州の人たちの生業である野菜運搬のトラック。
このトラックが止まってしまったら、ベンゲット州の野菜農家は、野菜販売からの収入は途絶え、
あっという間に貧困のどん底に。
そして、マニラの人たちも食糧不足に陥ってしまいますからね。
コーヒー栽培農家のほとんどは野菜も栽培しています。写真は主な作物のサヨテ(はやとうり)
さて、シサム・コーヒーです。
ルソン島北部のコーヒーの収穫期は11-1月くらいまでで、
その後、赤い果皮を剥いたコーヒー豆を乾燥させ、欠点豆を選別し、2-4月くらいまでの間に出荷します。
シサム・コーヒーを作っている農家さんは、ベンゲット州のトゥブライ町、キブンガン町、カパンガン町などの農家さんたちです。
私たちのNGOが苗木の配布をし、育て方と手入れの仕方を教え、
収穫期を迎えた村では収穫後の精製の方法を指導し、精製に必要な小さな機材を配布してきました。
生産者団体の農家さんの数はざっと220名くらいになります。
「収穫したコーヒーチェリー」 ©Yuya Takahashi
あちこちの町境が封鎖になった3月半ばは、ちょうど集荷のピーク。
私たちの集荷トラックは毎日、あっちの村、こっちの村に出動していました。
そのさなかでの封鎖です。
私たちの倉庫には、集荷予定のコーヒー豆の約3分の2が収まっています。
残りの3分の1は農家さんの代表者の家の片隅や生産者団体の倉庫で、
私たち同様、コロナ騒動の収束を待ち構えています。
こちらでは、例年よりちょっと早く乾季明けの最初の雨が降りました。
それを合図に、コーヒーの白い花は一斉に開きます。コーヒーの白い小さな花は、
たった二日だけ開いたあと、はかなく茶色く枯れてしまいます。
でも、その茶色く変色した花も香ばしい華やかな味のお茶として楽しめるのです。
産地ならではの季節の楽しみです。
私たちのスタッフもいまは、農園訪問できず、白い小さい軽やかな花の姿を見ることもできず、
コーヒーの花のお茶も味わえません。
それでも、コーヒーの木はウィルスなんて「われ関せず」とばかりに森の中で咲き誇っています。
私たちも、すでに次の収穫期の赤いコーヒーチェリーを夢見ています。
執筆: 反町眞理子
Mariko Sorimachi
1996年よりフィリピン在住。
2001年環境NGO「Cordillera Green Network(CGN)」をバギオ市にて設立。
コーディリエラ山岳地方の先住民族の暮らしを守り、山岳地方の自然資源を保全するために、
環境教育、植林、生計向上プログラムなど、数多くのプロジェクトを行っている。
2017年、CGNのスタッフたちとともに、社会的企業Kapi Tako Social Enterpriseを創立。
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