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森と村のほんとうの豊かさ
SISAM COFFEEの森から 第2話
「SISAM COFFEE」のコーヒー豆を届けてくれている
環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」の反町さんから
現地レポートの第2弾が届きました。
今、海の向こうの生産地はどんな状況なのか。
シサムのパートナーたちの暮らしは、どのように変化しているのか。
ご心配いただいている皆さま、本当にありがとうございます。
フィリピンから、臨場感あふれるコラムの第2弾をお届けします。
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マウンテン州サダンガ町(フェイスブックより)
私たちは、シサム・コーヒーの生産地であるルソン島北部にある小さな環境NGOです。
植林や子供たちのための環境教育を主な活動として、20年くらい継続してきました。
活動場所のコーディリエラと呼ばれるルソン島北部の山岳地方には、
さまざまな先住民の人たちが住んでいます。
先祖代々、森とともに、森の恵みを受けて暮らしてきた人たちです。
でも、グローバル化の波はどんどん山の奥にも浸透し、
東南アジアの劣等生と言われてきたフィリピンも、
ここ数年でマニラを中心にめまぐるしい経済発展が成し遂げられています。
マニラから6時間も離れた私たちが拠点とする山の町・バギオでも、
日本のバブル期(みなさんは経験していないかもしれませんね)のように、
お金で計れる豊かさを目指して人々は奔走し始めました。
山岳地方に暮らす先住民族の人たちも例外ではありません。
コンクリートの大きな家を建て、ぴっかぴかの自家用車を持ち、パソコンとスマートフォンを手に入れ、
町の人と同じような暮らしをするのが「夢」となっています。
すべてお金じゃないと買えないものたちです。
ずっと当たり前に身近にあった豊かな自然やゆったりした時間がおろそかにされ始めているのです。
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山奥に住んでいる先住民の人たちがお金を稼ぐ手段は何だかわかりますか?
山の村で、決まったお給料をもらえる仕事というのは、
役場勤めか、学校の先生、あるいは警察官くらいしかありません。
ほかに現金を稼ぐ手段といったら。。。
①海外に出稼ぎに行く
なんとフィリピンでは全人口の10%以上が海外で働いています。
看護師、介護士、お手伝いさん(メイドさん)、工場労働者などが主な仕事です。
日本には人手不足の農家のお手伝いをしに、シサム・コーヒーの生産地である
ベンゲット州の野菜農家の息子たちが技能実習生としてたくさん行っています。
山火事のあと
②野菜栽培をする
標高の高いベンゲット州は、フィリピン随一の高原野菜の生産地です。
マニラで売られている野菜の80%がベンゲット産という話もあります。
戦後山岳地方で始まった野菜栽培は、山の村にいながら現金収入をもたらすいちばんの手段で、
今もどんどん広がっています。
でも、野菜畑を拡張するには森を切り開くしかありません。
国立公園に指定されているはずの森林でも、毎年乾季には人為的と思われる山火事が起こり、
野菜畑に姿を変えているのです。
③自然資源をお金に換える
山岳地方に住んでいる先住民の人たちは、お金で考えると貧しい人たちになります。
でも、村には、こんこんと湧く泉があるし、野生動物や果物や山菜が採れる森があります。
そして、先祖代々守ってきた素晴らしい棚田のある村もまだたくさん残っています。
一銭もなくても、生きてくために必要なすべてが手に入るのです。
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違法な鉱山開発地域
でも、その豊かさを、お金のために村人自身が手放し始めました。
住民投票で水利権を電力会社に譲る決断をしたところもあります。
山岳地方は、鉱物資源が豊かなことでも知られているのですが、
それを違法に掘り出して危険な薬品を使って精錬してヤミで販売する人もあとを絶ちません。
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そんな状況をなんとかしようとして私たちのNGOが試行錯誤で始めたのが、
「アグロフォレストリー」とよばれる方法でのコーヒー栽培です。
アグロフォレストリーは簡単に言ってしまうと「林業+農業」ということ。
できるだけ森の生態系を守りながら、同じ場所で換金作物も栽培して、
収入を得られるようにしようという農業の方法です。
「環境保全」と「先住民の人たちの生計向上」を同時にやってしまおうという試みなわけです。
そのアグロフォレストリーのおもな換金作物としてアラビカ・コーヒーを栽培してもらっているのです。
栽培方法をサステナブルにしても、マーケットがサステナブルではなくては
農家の暮らしは変わらない!
ということで、フェアトレードの会社、シサム工房さんへの輸出が始まりました。
「SISAM COFFEE」の誕生です。
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2018年の大型台風被害の際は、シサム工房からの寄付により野菜の種を支給しました。
SISAM COFFEEの生産者さんたちは、ベンゲット州に住んでいますが、
コーヒー専業農家ではありません。
ほとんどの人が野菜栽培もしています。
育てている野菜は、キャベツ、ジャガイモ、白菜、ニンジン、インゲン豆、青菜、サヨテ(はやとうり)などなど。
ベンゲット州では多くが伝統の米作りをやめてしまい、
田んぼを現金を生む野菜栽培に転換してしまっています。
つまり、主食のお米は野菜販売で得たお金で買わないといけない、
という生活スタイルになっているわけですね。
ですから、このコロナ封鎖でも、野菜を販売することができなくなってしまったら
一気に生活が困窮します。
農家さんたちは必死で野菜を販売する手段を探し、
州や町の農政課もあの手この手で農家の野菜販売のサポートをしています。
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バギオ市での食料配給準備の様子(バギオ市広報課のフェイスブック・ページより)
しかし、封鎖によって町では多くの店舗やレストランが閉店し、
野菜の販売先も減り生活に困る農家さんも出てきました。
山岳地方の村々では、そんな農家さんのために米を中心とした食糧の配給が始まっています。
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野菜産地の食糧配給の準備は豪快です
(政府フィリピン情報局コーディリエラ地区のフェイスブックページより)
そんな中、社会福祉省からの食糧配給の申し出をきっぱり断った貧しい町が、
ベンゲット州よりさらにさらに山奥に入ったところにありました。
マウンテン州のサダンガ町です。
町長がフェイスブックで発表した声明はこんな内容です。
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©Carl Taawan フェイスブックページより
“私たちのコミュニティに貧しくて困窮している家族がいないわけではありません。
しかし、先住民族のコミュニティとして、私たちにはこういった危機的状況下で
親族や苦境にある隣人同士が助け合うという習慣を今でも維持しています。
コミュニティの中の「持てる者」(豊かな人)が「持たざる者」(貧しい人)に対して
サポートをするというものです。
もしこの危機的状況が長引いて、本当にコミュニティ内の米の供給が尽きるほどになったら、
各村に備蓄用にある伝統の米倉(アガマン)を開くことにします。
このような苦境にあっても、私たちのコミュニティでは飢えた家族は決して出ないということです。
政府の食糧の配給は、それをもっと必要としている都市部の貧しい人々や、他の地域の恵まれない人々のために使ってください”
執筆: 反町眞理子
Mariko Sorimachi
1996年よりフィリピン在住。
2001年環境NGO「Cordillera Green Network(CGN)」をバギオ市にて設立。
コーディリエラ山岳地方の先住民族の暮らしを守り、山岳地方の自然資源を保全するために、
環境教育、植林、生計向上プログラムなど、数多くのプロジェクトを行っている。
2017年、CGNのスタッフたちとともに、社会的企業Kapi Tako Social Enterpriseを創立。
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