商品の質について
シサム工房は、「フェアトレードの現場に商品開発力と販売力を」を社内スローガンにして、仕事に取り組んでいます。
さまざまな理由から通常の経済活動でははじき出されてしまうような生産者の人たちとフェアトレードの仕組みでつながるときに、私たちが商品開発と販売面のプロフェッショナルとして役割をしっかりと担う、という強い想いを持っています。
このときにどうしてもジレンマになるのが、商品の質の問題です。
シサム工房の取り扱い品のほとんどは、家内手工芸レベルの生産現場で作られています。
設備も知識も、そして生産者たちの意識も、まだまだ未熟で発展途上であり、質の管理がとても難しいのが実情です。
手織りであれば、どうしても織り傷や織り飛ばしといったことが発生する場合があります。
染めは天候や湿度の変化で同じ色を得ることができずに、納品の時期によって色が異なってしまうこともしばしばです。
さらに、取扱い商品のほとんどが天然素材であるということも、質の管理を難しくする原因となります。
天然素材は、一つ一つの色、つや、手触りなどすべてにおいて異なります。
中には成長の過程で傷やシミなどがついているものもあります。
私たち自身、どこまでを手仕事や天然素材の味とみなすことができるのか、許容できるのかという問いは、正直、常に問題意識として持っています。
同時に、質の管理は、商品を広く支持していただくため、つまりフェアトレードの仕組みを継続させていくために最も大切な要素であり、生産者たちにとっても間違いなくエンパワメントにつながることになると考えています。そうした意識でシビアに取り組み、継続的なものづくりを続けていく中で、私たちのパートナーである生産者たちの質へ対する意識や管理方法が向上し、間違いなく質は向上してきました。
ここで、私たちの商品の質についての考え方について、みなさまと共有しておきたいことがございます。
1つは、商品販売という観点から、質や価格のことだけを考えたら、もっとほかに生産環境が整った工場などとの取引がありえるのかもしれません。別の国や場所でもっと安く、質の高いものを手に入れることができるかもしれません。
ですが私たちは、質の管理のために、そうしたところへ取引を移行させるつもりも、生産者を変えるつもりも全くありません。
私たちの使命は、家内手工芸レベルの生産者たちと対等な関係を結んで継続的な付き合いをし、お互いに暮らしを成り立たせていくことであると考えています。
それがフェアトレード事業であり、私たちの創業以来の志であり、そして存在意義だと考えています。
もう1つが、私たちが目指しているのは、手仕事の精緻さや高尚な美術的価値をもつ美術工芸品ではないということです。
ましてや均質、均一なものを大量に生み出し、廃棄させながらまた流通させていくことでもありません。
むしろ、多少のゆがみやきず、不均一さといったものは、天然素材や生産者による一瞬の偶然によって生まれた個性と考えています。
そして私たちは販売を通して、そうしたものの個性を受容するゆとりのような価値感こそを社会に広げていきたいと考えています。
シサム工房の取扱い品は、均質なものでも、機械的に大量に作ることのできる商品でもありません。
手仕事の跡が残ったものになります。
それが未熟な証だとしても、私たちが目指すところは、貧困から抜け出す為に、今持てる技術の限りに生産に取組む生産者たちに継続的に仕事を注文していくことであり、手仕事で作られたものの個性や多少のことを受容する価値感を社会に広げていくことです。
ぜひ、みなさまにもシサム工房の質への考え方、姿勢についてご了承いただいた上で、お買いものをして頂ければと思います。
そしてお買物を通して、生産者たちの暮らしを支え、また新たな価値を感じていただければと願っております。
シサム工房 代表 水野泰平
※ 上記は基本的な姿勢について書いたものです。
ご購入後、商品について気になることがございましたら、ご購入店舗にお気軽にご連絡ください。