レシュマさんの話 ~ラリさん来日レポート1~
「ラリさーん!!」
「ラリさん、Welcome to sisam!!!」
3年ぶりに会ったラリさんは、ぴしっとした背広に、きらりと光るインド国旗のバッチを胸元につけて
私たちの出迎えに少しはにかみながら現れました。
ラリさんは、sisamにとって古くからの大切なパートナーの一人。
手刺繍やダブルガーゼの衣服に袖を通されたことはありますか?
その服は全て、インドの「カラティマク」というフェアトレードNGOで働く16人のスタッフと、150人の作り手により届けられたもの。
その代表を長年務めているのが、ラリさんなのです。
sisamがカラティマクと出会い、共にものづくりを続けてきた道のりは、
気づけば13年という、長く深い年月になりました。
この3年間、深刻なコロナ禍においてインドがどのような状況だったかは、皆さまにもお伝えしてきました。
自分たちはものづくりの現場が止まってしまうほどの深刻な状況にいるにも関わらず、
私たちや日本のことを心配し、何度も励ましの言葉を届けてくれたことは、今でも思い出すと込みあげてくるものがあります。
この日、ラリさんは一つの映像を届けてくれました。
インドの刺繍村で、「チカン刺繍」を刺してくれているレシュマさんのインタビューです。
「作り手」「生産者」と日々呼んでいるその言葉が、
急に体温をおびて、自分のなかにとびこんできた瞬間。
そこには一人の女性の生きる姿が確かに在るのだということを、鮮烈に感じました。
イスラムに基づいた法のもと、離婚を決めることができるのは男性だけ。
レシュマさんは今でも離婚をすることはできないまま、母親の家で子ども2人(長男は連れていかれてしまった)を育てています。
朝起きたら、まずかまどに火をつけて、料理の準備をすることから。
水や電力が常に近くにある私たちの生活とはちがい、一つ一つが時間と人の力を要します。
それでも小さな子どもを抱えながら、あの繊細な刺繍を毎日何時間も刺しているんです。
届けてくれた服に小さなシミがついていたりするのは、そんな彼女たちの生活の気配がわずかに残ったもの。
汚れ一つないきれいな状態で服が届くことも、決して当たり前ではないのだなと思います。
彼女や多くの作り手にとって、「家でできる仕事がある」ということが、とても大切な意味をもちます。
今の収入は、生活するには十分だけれど、子どもが大きくなったら増やしていきたいなとレシュマさんは話します。
そしてインドには「アーティザン(職人)カード」というものがあるんです。
このカードを持っていると、食材が安くで手に入ったり、病院や教育が無償になることがあります。
これはインド政府の「ヘルシーアーティザン」という取り組み。
インドの政府には、「布省」や「手織り省」なるものがあるそう。すごい。インドならではですね。
手仕事が人々の生業として深く染み込んだインド。
それを次の世代へと紡ぎながら生きようとする人々の暮らしを、国として支えようという動きがあるんです。
でもやはりその仕組みとともに必要なのは、手仕事の魅力を多くの人に伝え、買い手とつないでいく存在。
フェアトレードもまた、この仕組みのなかで非常に大きな意味を持ちます。
「私にとって、これは仕事以上のものです。」
想像を絶するような暴力や、私たちが理不尽と感じる価値観のなかで生きてきたレシュマさんにとって、
自分の力で収入を得ること、誰かに届けるものづくりをすることが、どういうことなのか。
それは私が今まで表現してきた言葉よりも、はるかにたくさんの意味を持つのだということを
たった3分間の映像からもはっきりと教えられました。
映像を見た時、心が痛いとか、支えたいという感情とはまた別のものが、私のほとんどを占めていたように思います。
言葉にするとうまく形になりませんが、私たちとレシュマさんは本当に繋がっているんだということを、
ただただ強く感じました。
レシュマさんの向こうには、150を超えるカラティマクの人々の生きる姿があります。
全てのパートナーを合わせると1000を超える数。
途方もなく大きく、根が深く。
そしてなんて豊かな繋がりなんだろうと思います。
「どんな困難にも決して屈しない」
それぞれの場所で、それぞれの不安や苦しさと向き合って今を生きる私たちに、レシュマさんのその一言が力強く響きます。
響いて、響き合って、この社会に鳴り響くものへと変えていけるように。
FAIR TRADE LIFE STORE by sisam FAIR TRADE
タニ
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ラりさんのお話はまだまだ続きます。
3年間、カラティマクの人々は何を想い、どんな状況だったのか、
そしてどこへ向かおうとしているのか。
引き続き、お付き合いください。
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