わたしと手しごと vol.3
私たちの日々に寄り添ってくれる手しごとの存在に着目し、
10月に実施した「あなたの手しごとを教えてください」アンケート。
第3話では、アンケートにご協力いただいた皆さまの中から、
1名のお客様とsisamデザイナーの「手しごと」をご紹介しています。
皆さまに、手しごとのぬくもりが届きますように。
思い出を、世界に一点のフレームに
今回は、兵庫県にお住いのお客様「ゆっちゃん」のお話。
「作る人だけでなく、使う人も癒されるもの」。
手しごとをそう表現する彼女の生活の中には、家族との思い出を彩る品々があります。
小学校時代からの友人に作り方を教えてもらったという、布製の写真フレーム。
中に入れる作品をイメージして、家に眠っていた布や古着から、ハギレの柄を選ぶようにしています。
フレームに厚みを出すために綿やキルト綿を入れることで、表面がでこぼこするのも手しごとの味わい。
ゆっちゃんの手から生み出される手作りの写真フレームが部屋に温かさをもたらしてくれます。
フレームには、家族やかわいい孫の写真、今年卒寿を迎える母の塗り絵作品などを飾っています。
大切な人を想って作り上げた特別なフレームに収まることで、そこに詰まった思い出がより深まり、日々に寄り添ってくれるのです。
彼女はこれから、先日誕生したばかりのお孫さんの写真を入れるために新たにフレームを作成するんだそう。
やわらかで小さな赤ちゃんの写真のフレームには、できるだけ優しい色合いの布を選んで。
世界に一つだけの写真フレームで、新たな命の誕生をお祝いしたいですね。
きっとゆっちゃんが作るそのフレームには、大事な家族にいつまでも元気で笑っていてほしいという、願いも込められているのだろうと思います。
愉しむ気持ちがあれば
sisamのデザイナー・エンドウは「ものづくり」を愉しむプロフェッショナル。
大工だった曽祖父や陶芸を嗜んでいた叔父の影響で、幼い頃からものづくりが身近にありました。
そんなエンドウの手しごと品は、見るとクスっと笑顔になれるものばかり。
長男が生まれた際に手作りした人形。
初めての子育て、子どもの肌に触れるものはできるだけ安心できる素材を。
そう考えたエンドウは、使い古した肌着やTシャツの生地をつかって、猿の「ネムさん」をつくりました。
肌着ゆえの柔らかさと、安心感のある触りごこち。
長男が保育園にも連れていくほどの相棒になったそうです。
長男から長女へと受け継がれたネムさん。
何度も何度も補強しながら、長い間、兄妹を見守ってくれる存在です。
息子の肌着には、「ウォーリーを探せ」に出てきた宇宙人や、キラキラ光る物が好きな息子のためにエメラルドを刺繍しました。
刺繍を誇らしげに見せる息子の写真は、数年たった今でも見返すたびに癒しを与えてくれます。
家族のためだけでなく、誰かのために手づくりで作ったものをプレゼントするのが好きだというエンドウ。
完成したものに作り手の人柄が出るのが、手しごとの面白いところなんだとか。
まだ手しごとに出会っていない人には、まずは作ることを「ただ愉しむ」こと、
そしてものづくりにおいて、うまいか下手かは関係ないのだということを教えてくれました。
ないから買うのではなく、ないから作る。
私たち人間だからこそできる暮らし方を、日々の手しごと、そしてsisamでのものづくりを通して、
エンドウはこれからも体現していくのだと思います。
思い返せば私も、昔はダンボールや新聞紙、布のハギレをつかって、
自分の理想の世界を生み出すために、いろんなものを手づくりしていました。
買ってもらえなかったゲーム機、母の日に渡すプレゼント、人形に着せるためのドレス…
一つ一つを思い出すと、あの頃のワクワクした気持ちがよみがえってきます。
純粋に楽しんでいたものづくりからいつの間にか離れてしまっていた、そんな人も少なくないはず。
けれど私は、いつだって私たちの中には想像力が秘められているのではないかと思います。
楽しみたい!という素直な気持ちを、手しごとを通して形に変える。
このコラムが、その小さな一歩を踏み出すきっかけになれれば嬉しいです。
2024年、新たな年に新しい取り組みを。
誰かの手しごとの芽がひらく、そんな一年になりますように。
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ウエムラ