わたしとsisam Vol.5 総務ムラカミ
最終話を飾るのは、勤続23年のスタッフ。
フェアトレードの仕事と聞くと、現地とやりとりするデザイナーや、商品を販売をする人を思い浮かべる方がほとんどだと思う。
でもその根っこで、表からは見えないところで、20年以上走り続けてきた人がいる。
それが、総務を担当しているムラカミだ。
ムラカミは、前職で同僚だった代表のミズノに誘われ、当時数名しかいなかったシサム工房でお店作りを手伝い始めた。
その縁が深まっていき、23年前に正式にシサム工房のメンバーに加わったのだ。
まだフェアトレードという言葉すら知られていなかった時代だ。
“その時々で、やるべきことを一生懸命やってきました。
当時はシサム工房とともに大きな流れの中にいて、外からどう見えているのか、ゆっくり立ち止まって考えることがあまりなかったように思います。
でも気づけば、周りにはシサム工房を知っている人や、フェアトレードだと認識してくれている人が増えてきて。
あぁ、認められてきているんだと、嬉しかったですね。
これからもその時の気持ちをちゃんと忘れないでいようと思っています。
自分がなぜここにいるのか、やるべきことができているのかと。”
総務と聞くとデスクワークのイメージがあるけれど、実は一番多彩な仕事かもしれない。
現地とのお金のやりとりや人事の仕事などの軸となる役割から、ムラカミは軽々と飛び越えることがよくある。
どこかの店舗のエアコンが壊れたら、駆けつける。
商品が届いたら入荷作業へと、駆けつける。
フェアトレードのイベントがあれば、駆けつける。
ムラカミは、フェアトレードで働く人々のなかを駆けまわり、土台を耕す人だ。
“僕がやっているのは、フェアトレードの活動自体をスムーズにまわすための仕事。
誰も拾わないようなところを拾っていくことなんだと思います。”
sisamを23年間支えてきたムラカミにとって、「良き隣人」とは何だろうか。
“他人事にしないということかな。
あまり大きく捉えると、訳が分からなくなってくるけれど、目の前の人との縁を一つ一つ大切にしていく。
その中で生まれることがあるんですよね。
誰かがやってくれるんじゃなくて、自分が行動していく。
それが何かに繋がっていくんだと思っています。”
誰かの思いを、誰かが受け取る。
その小さな動力が重なって重なって、社会は日々進んでいるのだと思う。
その片隅には、静かに地道に、自分ではない誰かに光を当て続けている人たちが必ずいるのだと、
ムラカミの駆け抜けた23年が教えてくれる。
sisamの料理人
sisamのなかで料理人は誰だと問いかけてみたら、
おそらく大半のスタッフがムラカミの名をあげる。
料理好きが集まるsisamのなかでもひと際、誰かに食べてもらうことに対して優しいエネルギーを持っている。
ムラカミが作るタイ料理のラープ(スパイスサラダ)を、私たちは何度おいしく頬張ったことだろう。
コラムに出すためにインド料理のビリヤニを撮影したいとお願いすれば、
朝早くから事務所の台所に立って作ってくれたこともある。
そう、ムラカミが得意とするのはアジア料理だ。
“郷土料理が好きなんだと思います。
それぞれの土地の持つ文化の香りがするからなのかもしれません。
学生時代に無国籍料理店でアルバイトをしたことが始まり。
アジア各国を旅したり、前職でタイ料理と出会ったり、その時々に学んだり、口にしたものを、少しずつ自己流にやってみています。”
また、通っていた料理教室でおこなわれたイベントでたまたまコーヒー担当をしてみたことがきっかけで、
コーヒーの世界にものめり込んでいった。
今ではsisamのイベントなどで、「ムラマサコーヒー」という名でシサムコーヒーをふるまっていることもある。
「やってみる」という行動が誠実であるほどに、その人の世界は着実に広がっていくのかもしれない。
さて、最後はムラカミおすすめのレシピでエンドロールを飾りたい。
選んだ一品は、インド料理の「サモサ」だ。
休日のキッチンで、ささやかなアジア旅行を楽しんでほしい。
ムラカミ流サモサのレシピ
材料
中の具:
にんにく ひとかけ
玉ねぎ 半個~1個 みじん切り
グリースピース 少量
じゃがいも 大きめなら3個、小さめなら4個 指先ぐらいの大きさにカットしておく
ターメリック 小さじ1
クミン 小さじ1
コリアンダー 小さじ1
塩、胡椒
生地:
薄力粉 200g
ぬるま湯 60cc
豆乳 30cc
油 大さじ2
レシピ
・まずはにんにくを炒め、香りを出す
・そこから玉ねぎが透明になるまで炒め、じゃがいも、グリーンピースも炒める
・スパイスも追加して炒める(必要に応じて油追加)
・水をひたひたに入れて、じゃがいもが柔らかくなり、水分が飛ぶぐらいまで加熱する。(粉ふき芋ぐらい)
・最後に塩、胡椒で味を調整。
・生地の具をボールに入れて、少し固めにまとめる(やわらかいと成型しにくい)
・30分ほど寝かせる
・少し横に伸ばして3等分し、生地をそれぞれ麺棒で丸く伸ばす
(必要に応じて、粉をふりながら作業する)
・丸く伸ばした生地を、半分にカット
・生地の切り口部分を、水を付けて合わせて、円錐状にする。
・具を、中に詰め込み、水をつけて、とじる。
*生地のなかに油を入れることで、サクッとした仕上がりの生地になる。
・170度の油でじっくりゆっくり揚げる。
お気に入りの器に盛りつければ完成!
最後に
シサム工房創業25周年を機に、5人のインタビューをこの一年間でご紹介してきました。
私たちスタッフは、それぞれ大切にしていることが同じ形をしているわけではありません。
さらにはその向こうで数えきれないほど多様な価値観や生き方の生産者がアジア各国で働いています。
フェアトレードの活動は、ひとつのチームという名では到底まとめあげられないほど、全貌がつかめない大きなことなのかもしれません。
でもそれと同時に、「あぁ、こういう選択肢もあるのね」と、誰かの思いや行動が、少しずつ軌道を変えてきたからこそ、
この25年があったことも大切な事実です。
持ち寄った力も、見えている世界もちがう人たちが集まり、それぞれが信じる”良き隣人”としての力を尽くすフェアトレードの仕事は、やっぱりとても豊かで、難解で、魅力的だと私は思います。
そんな私たちのフェアトレードに出会ってくださった皆さまに、
25周年の感謝を改めて申し上げます。
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タニ
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